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書評 『天命の暗号』出口光著 究極の自分探しの方法が描かれた名著 歪なプラス思考を克服する理論

2016/08/19 00:20 投稿

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(本文)

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出口光著
『天命の暗号』
を読んだ。

この本は、私が読んできた自己啓発本の中で
最も合点がいき、共感した本の一冊である。

従来の自己啓発理論の歪なところが
この本を読んで理解できた。

最も重要な人間の精神から目をそらしてきたのだ。

それは『魂』である。

魂というと、何か根性論や怪しい宗教の教えを述べているように感じる方もいるだろう。
しかしこの本で述べられている魂とは、その人の持っている信念であり、思想や
価値観の核となるもののことである。

人の精神の中には、心と魂の二つの存在があると述べている。

心は、様々な現象に直面してコロコロと揺れ動く精神の働きである。
私たちの日常は喜怒哀楽が瞬間瞬間で起きており、その揺れ動く
精神の働きを心とよぶ。

一方、魂とは、その人の持つ信念や、大切に思っている価値観である。
例えば、信仰やイデオロギー、思想信条などのことだ。

魂は心と違って、簡単に揺れ動くことはない。

そして魂は、特定の信仰や思想を奉じてなくても、多くの人が持っているものだと述べている。

その人の魂が求めているものが、その人の「天命」だと著者は述べる。

それでは天命を探るにはどうすればよいのか?

天命を探るのは簡単にできる。

自分が何に嘆いているのかを見ればわかると。

人々が嘆くのは魂の領域が満足しないときだ。

つまり何に嘆くかは、その人の魂を探るシグナルなのである。

例えば、著者の出口氏は、自分は歌が下手だが、そのことを別に嘆かない、と述べる。
なぜなら、歌が下手なのは自分にとっては重要なことではないからだと。

歌手や演劇俳優なら、歌が下手なことは嘆きの対象になるだろう。

つまり、嘆きこそが、その人が求めている本当の欲求であり、その
欲求を実現させようとするのが天命であると。

その魂から生じる天命を理解することが、それぞれの人生の目的であると。

ここで近年の自己啓発で必ず言われるプラス思考のマイナス面について、
出口氏は以下のように指摘する。

何でもプラスに考えればよいというのは、きわめて不自然な思考方法である。
人間のこころは揺れ動くものであり、プラスがあればマイナスがある。
そのマイナスを否定することは、人間の本来の心のありようを否定する
究極のマイナス思考ではないか?
と。

そして、嘆きという世間ではマイナス思考の代表のように思われている、
思考のなかにこそ、天命が潜んでいるのであり、そこに焦点をあてよ、
と述べる。

確かに重要なことだと思わなければ、人は嘆かないだろう。

私も嘆きながら本を書いて、情報発信をしてきた。

嘆きの中から、それを克服するための自らの政治経済思想理論を展開してきた。

古今東西の偉人たちの多くも、嘆きながら、自らの天命に基づいて活動をしたのである。

嘆きこそが、自らの人生の目的を見つけ、生き抜く真の宝のありかだったのだ。

ところが現在の自己啓発の主流であるプラス思考理論は、この嘆きをマイナス思考として
徹底的に無視するように働きかける。

その結果、その人が本当に大切なことだと思っていることから目をそらさせ、
「ウキウキわくわくする楽しいこと」だけを行っていくべきだという、
軽薄短小な心理状態に誘導している。

そうなると、権威や体制に歯向かうような根性やプレッシャーのかかることから
人々は目をそらすようになる。

また自らの魂に嘆きを与える社会の様々な矛盾を
直視させないようにし、安楽な権威や体制への服従を
肯定するようになる。

これは、国際銀行権力の研究家たちが述べてきた、
「魂のない人間の創造」
つまり家畜人間をつくるための、巧みなマインドコントロールであったのではないか。

当然のことだが、人々が魂を見つめ、自らの天命にこだわることは、
社会を自らの望む方向に管理したい権力にとっては、不都合なことなのだ。

魂を見つめ、天命を意識化した時に人間は、真の自立を始めるのである。

そこには、成功も失敗もない。

その人の生き様があるだけだ。

自らの天命を知りたい方に、ぜひとも『天命の暗号』をお勧めしたい。



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