主張
ベルギー連続テロ
許されぬ蛮行を断固糾弾する
蛮行がまた繰り返されました。欧州連合(EU)の本部が置かれているベルギー・ブリュッセルでの連続爆破事件の発生です。許されない無差別殺人を断固糾弾するとともに、犠牲者の遺族、関係者に心からの哀悼を表します。国際社会は今こそ結束を強め、テロの再発を防ぐための真剣な対策をいっそう強めるべきです。
国際結束強め再発防げ
22日、空港と地下鉄駅構内で相次いで発生した爆発によって、三十数人が死亡、日本人を含む200人以上が重軽傷を負いました。イラクとシリアの一部を支配し、世界各地でテロを呼びかけている過激組織ISが犯行声明を出しました。ISに対しては米国を中心とした「有志連合」が空爆などを展開しています。報道によれば、有志連合へのベルギーの参加を今回のテロの理由としているといわれています。しかし、公共の交通機関を狙って、何の罪もない普通の市民の命を一瞬にして奪った行為は、どんな言い訳や正当化も成り立たない卑劣なテロです。責任者を速やかに拘束し、裁きがなされなければなりません。
昨年11月のパリ同時テロ後、ISに対する各国の軍事作戦が格段に強化されました。フランスは「戦争状態」を宣言し、空爆を強化しました。また、ロシアはシリアの政権と協力しながら、反政府勢力の拠点への大規模な空爆を行ってきました。
軍事作戦はIS支配地域を一定縮小させたと報じられていますが、パリ事件以降も、インドネシア、トルコ、コートジボワールなどで大規模なテロ事件が発生しました。空爆強化はテロの拡散を抑えることにはつながっていないのが現実です。テロに対して、欧米などが軍事攻撃の強化で対応することは、多数の民間人を殺害し、現地の恨みを買い、テロと戦争の悪循環をさらに激化させます。IS支配地域を取材したドイツ人記者は「子どもが1人殺されるたびに新たなテロリストが生まれる。戦争はブーメランだ」と述べ、「西側諸国はISを軍事手段では打倒できない」と警告しています。
何よりも重要なのは、国連を中心に、国際社会が一致して、テロ組織を包囲し、解体に追い込むことです。国連安保理はこれまで数次にわたって決議を採択し、ISへの資金や武器の流入の遮断、外国人戦闘員の移動の禁止などのさまざまな措置を実施するため、各国に協力を呼び掛けてきました。これらの措置を真に実効あるものにするため、シリア・イラク周辺国の国境管理の強化など国際的な協力がいっそう求められています。
欧州でのテロには、中東・アフリカ出身者やその子孫が多く参加しているとの指摘もあります。彼らがテロ組織にひきつけられる背景にある、貧困や格差、宗教・民族に関わる差別などをなくすとりくみが重要になっています。
シリアとイラクの内戦状態を解決し、地域の平和と安定をはかること、大量の難民への人道的支援を強化することも必要です。
テロ根絶へ外交に力を
日本政府は、戦争法(安保法制)を適用して米国などの軍事作戦に加担する選択をとるべきではありません。政府は、テロ根絶のための国際社会の努力の先頭に立ち、政治的・外交的な解決のために知恵と力を尽くすべきです。