主張
女性差別是正勧告
指摘を受け止め本気の改善を
国連女性差別撤廃条約にもとづく日本政府の実施状況について、今年2月、国連女性差別撤廃委員会(ジュネーブで開催)で検討がおこなわれ、今月7日に、同委員会は、日本についての評価と勧告を盛り込んだ文書(「総括所見」)を発表しました。
問われ続ける日本政府
日本についての審議は、今回で5回目です。「総括所見」では、前回(2009年)の審議後7年間の政府の取り組みの評価すべき点、女性差別の実情と解決への取り組みの到達、今後の改善・是正の方向について政府に提言されました。
今回の審議で浮き彫りになったのは、前回勧告に真(しん)摯(し)に向き合わない日本政府の姿勢です。前回の審議で、日本政府の対応は「(条約を)宣言のようにしか受け止めていない」と批判され、条約を法的拘束力ある国際文書と認めて完全な実施を求める勧告が出されていました。にもかかわらず、今回も「進(しん)捗(ちょく)があまりに遅い」「不平等が続く」「具体的な政策がない」など締約国会合で選ばれた女性差別撤廃委員から厳しい声が相次ぎました。
「総括所見」には、“日本の法律には条約が掲げる差別の定義がない”ことをはじめ、いくつもの課題で、“前回勧告を繰り返す”“前回勧告を想起し”と表現した上での指摘が目立つのも特徴の一つです。
具体的に改善が求められた課題は、多岐にわたります。賃金格差、管理職への登用、マタハラ(妊娠・出産にかかわるハラスメント)、セクハラ、非正規雇用など雇用の場での平等、2020年までに政策意思決定の場での女性比率30%目標の達成、女性への暴力、マイノリティーなどの人権の問題、「慰安婦」問題の真の解決、貧困の解決など、どれも繰り返されてきたテーマです。前回の勧告で、とくに重視した民法改正の問題は、この間の最高裁判決で婚外子への相続差別の是正がなされ、女性のみの再婚禁止期間は短縮方向に踏み出したものの、選択的夫婦別姓の実現はまだでした。一刻も早く是正をはかることを勧告は繰り返し求めています。NGOから女性差別の改善として委員会に報告されていた、業者や農漁村女性の働き分を認めない所得税法56条廃止も勧告に盛り込まれています。
とりわけ今回の審議で日本政府は、日本軍「慰安婦」をめぐる問題で異常な姿を示しました。日本政府代表団(団長・杉山晋輔外務審議官)は、“強制連行はなかった”“性奴隷という表現は事実に反する”“条約批准以前の問題だ。報告は必要ない”などの主張を居丈高に展開しました。女性差別撤廃委員からの厳しい批判とともに、審議をジュネーブで傍聴した日本のNGOから、「安倍政権下での異常な事態」という声が出されたのは当然です。
条約と勧告を力にして
条約の実現を求める日本の女性たちが多くの報告を女性差別撤廃委員会に寄せた中での審議でした。日本政府は、同委員会からの勧告を真摯に受け止め、男女平等実現の世界のルールとして条約にもとづく改善の取り組みを本気ですすめることが、条約批准国の責任として求められています。
国連女性差別撤廃条約と勧告を力に主権者としての女性の運動と共同がいっそう大きく広がることは間違いありません。
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