憲法の条文そのものを変えようとする安倍晋三首相の明文改憲発言がエスカレートし、2日の参院予算委員会では「(明文改憲を)在任中に成し遂げたい」「先の総選挙でもそれを訴えているわけだから、それを目指したい」と言い放ちました。

 憲法99条は、首相をはじめ閣僚、国会議員、裁判官その他の公務員に対して、憲法を尊重し擁護する義務を課しています。それは、憲法が「最高法規」(98条)であり、すべての国家権力を制限する法として、憲法違反の国家行為は「無効」だからです。

 それに加え99条は、公務員は憲法を積極的に支持・擁護し、その理念の実現のために行動する義務を負うことを定めています。

 公務員が憲法を無視し改憲を主張することは、憲法99条に真っ向から反し、その資格に関わる問題です。

 国民の代表機関として、改憲の発議権が与えられる国会の構成員である国会議員には、改憲の主張が認められることがありますが、内閣の一員たる閣僚にはその権限はありません。

 安倍首相が繰り返す明文改憲発言は、まさに立憲主義の核心的規定を、確信犯的に踏みにじるもので、まともな政治家の発言とはいえません。

 しかも、安倍首相は、昨年9月に強行した戦争法(安保法制)で、憲法9条2項の戦力不保持規定のもとで「海外での武力行使は許されない」としてきた長年の政府解釈を身勝手に「変更」し、アメリカの戦争に世界中で協力する体制を可能としました。そのこと自体が許されざる98条、99条違反です。

 その戦争法が3月末に「施行」されようとする中、明文改憲を繰りかえし主張する姿勢は99条への挑戦といえるものです。

 戦争法では「限定的」とされる集団的自衛権の行使を、「無制限に可能とする」ために安倍首相が9条2項改定を主張するに至っては、あれほど乱暴な「解釈・立法改憲」を強行したのは一体何のためなのかという深い憤りが生じます。自民党議員からさえ「暴走というより何を考えているのかわからない」という戸惑いの声が漏れます。

 99条の重みを理解せず、憲法をもてあそぶ首相に政治を担う資格はありません。(中祖寅一)