主張
介護保険改定議論
安心壊す「軽度」はずしやめよ
2018年度の介護保険制度改定へ向けた議論が、厚生労働省の審議会で開始されました。今回の改定議論で削減の標的にされているのは、要介護1・同2の人の暮らしを支える生活援助サービスです。介護保険をめぐっては、一昨年の法改悪で要支援1・同2の人の訪問介護などのサービスが保険対象から外されたばかりです。社会保障費の大幅削減のために、次から次へと介護保険改悪をすすめる安倍晋三政権の姿勢は、あまりに異常です。老後の安心・安全を願う高齢者と家族の願いに逆らい、制度の根幹を掘り崩す介護保険改悪は絶対に許されません。
次から次へと改悪の暴走
介護保険の改定議論がスタートした2月半ばの厚労省の審議会に出された資料に、改悪の方向がずらりと盛り込まれました。「軽度者への支援のあり方」「福祉用具・住宅改修」「利用者負担」と抽象的な記述ですが、政府の念頭にあるのは、軽度者の利用できるサービスの制限や負担増などです。
焦点は、要介護1・同2の人の生活援助サービスの「保険外し」です。介護保険では、「自立度」や健康状態によって、軽い方から重い方へ要支援1、2から要介護1~5まで7段階の認定が行われ、その認定の度合いによって受けられるサービスが決められます。介護保険財政への公費支出をなんとか抑え込みたい安倍政権は、軽度者の使える保険サービスを削減する方向を強めてきました。
14年に安倍政権と与党が成立を強行した「医療・介護総合法」では、要支援の訪問介護・デイサービスが介護保険から外され、市区町村の事業に移されました。17年度から全自治体で実施するとしていますが、各地で、「受け皿」不足が浮き彫りになるなど利用者・家族の不安を高めています。特別養護老人ホームの入所条件も要介護3以上に厳格化され、要介護2以下の人たちの行き場探しが、ますます困難にされています。
それに追い打ちをかけるように持ち出されてきたのが要介護1・同2の生活援助の「保険外し」です。高い保険料を払い続けたうえ、「介護サービスが必要」と介護認定されても、それに見合ったサービスが受けられないことほど矛盾した話はありません。「保険」の根幹にかかわる大問題です。
財務省の財政制度等審議会などは、生活援助で掃除や調理の利用が軽度者に多いことを、繰り返しやり玉に挙げています。乱暴な意見です。介護保険の掃除や調理の支援は、ケアプランにもとづき計画的に実施されているものです。専門家が生活援助に入ることで利用者の状態の微妙な変化にも気付き、早期対応が可能になります。生活援助の「保険外し」は、そのような対応をきわめて難しくします。その結果、利用者の重症化がすすめば介護保険財政を圧迫することにしかなりません。
制限でなく制度充実こそ
安倍首相は12年末の政権復帰後、一定所得以上の人の利用料2割負担化や介護報酬の大規模なマイナス改定などを毎年のように実行しています。高齢者と家族にこれだけ苦難と犠牲ばかりを強いておいて、いったいどこが「介護離職ゼロ」社会なのか。安倍政権による介護保険制度破壊の加速を許さず、安心・安全の介護保障の実現へ転換させることが必要です。