PKOの任務はこの20年間余で大幅に変質し、中立性を投げ捨て自ら「交戦主体」=紛争当事者になっています。
掃討作戦転化も
安倍政権が強行した戦争法の一部・改定PKO法は、国連PKOの危険な変質をそのまま「吸収」する内容を含んでいます。(図)
改定PKO法は、国連PKOが混乱状態の中で住民を「保護する責任」にもとづき武装勢力の制圧を辞さない活動に乗り出すもと、自衛隊による「住民の保護」を規定(➊)。それに対応し、「特定の区域の保安のため」として、自衛隊が「監視、駐留、巡回、検問及び警護」を行い(➋)、その任務を妨害する勢力が現れた場合は、妨害排除・粉砕のための「武器使用」(➌)を盛り込んでいます(安全確保活動)。
このように、改定PKO法のもとでの自衛隊の任務は、停戦状態を“維持”“監視”するという従来のPKO法の活動とは異質な、混乱状態の中で暴力への対峙(たいじ)、制圧を任務とするものです。一定の地域で特定の場所を監視・巡回し、怪しい者は引きとめ尋問(検問)し、危険が生じれば武器を使う(警護)という「保安活動」です。一歩間違えば、掃討作戦に転化する危険もあります。
現在、自衛隊が展開する南スーダンでは内戦状態が恒常化し、大統領派の武装勢力の襲撃を恐れた民衆が国連保護施設に大規模に避難する状態が続いています。国連保護施設が襲撃を受け、銃撃戦が何度も起きています。PKO部隊が必然的に武装勢力との交戦当事者になり、「殺し殺される」状況です。
違憲の武力行使
武器使用基準が任務遂行・妨害排除型に拡大されたことは何を意味するのでしょうか。
従来の「自己保存」のための武器使用であれば、例えば自衛隊が巡回中に襲われた場合、まずは「巡回」任務は中止して退避し、自分と自分の「管理下」にある他人の生命を守るために「必要最小限」の武器使用ができるという限定がありました。建前では、不測の事態における「自然権的権利ともいうべき」やむを得ない反撃です。
武器使用基準が「任務遂行」型になれば、自衛隊は巡回の任務継続を前提に、妨害勢力を排除するために積極的な応戦・攻撃を行うことになります。「必要」なら相手を殲滅(せんめつ)することもありえます。
自衛隊が任務遂行と一体に武器使用するもので、まさに軍としての組織的・計画的な武器使用、武力の行使です。従来は、武力の行使で憲法違反になる可能性があるとして、認められてこなかったものです。
政府は、相手が国または国に準ずる組織でないので、「国際的武力紛争ではなく武力行使にならない」といいます。しかし、南スーダンで国連PKO部隊に攻撃を仕掛ける最大の存在は南スーダン政府軍です。国連PKOは内戦に巻き込まれた状態です。このような状況下での反撃は、紛れもなく違憲の武力行使です。
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