主張
「建国記念の日」
特異な歴史観を押しつけるな
きょう2月11日は「建国記念の日」とされています。祝日法は、第2条で「建国をしのび、国を愛する心を養う」日としています。この日はもともと戦前の「紀元節」です。明治政府が1873年、天皇の専制支配に神話によって権威を与えるため、架空の人物である「神武天皇」の即位の日としてつくりあげたもので、科学的にも歴史的にも根拠がありません。
戦前の「紀元節」を復活
「紀元節」は戦前、日本を「神の国」として、国民を軍国主義と侵略戦争にかりたてるために利用されてきました。そのため戦後、主権在民や思想・学問の自由、信教の自由と政教分離などを定めた日本国憲法の民主的条項に反するものとして廃止されました。
ところが50年前の1966年、佐藤栄作内閣が多くの国民の反対を押しきって祝日法を改悪し、「建国記念の日」と称して「紀元節」を復活させました。それは天皇の元首化など憲法改悪や軍国主義復活の企てと結びついたものでした。今年は、自民党政権が強行した「紀元節」復活から、ちょうど半世紀の節目となります。
見過ごせないのは、第2次安倍晋三内閣の発足以降、政府が「愛国心」と結んで「建国記念の日」をことさら強調する動きを強めていることです。安倍首相は一昨年から「建国記念の日」を迎えるにあたってのメッセージを発表していますが、これは現職の首相としては初めてのことです。
さらに、安倍内閣のもとで非科学的な歴史観や特異な文化論を国民に押しつける動きが強まっていることも軽視できません。
昨年10月、安倍首相のもとに「『日本の美』総合プロジェクト懇談会」が発足しました。座長には俳優の津川雅彦氏が就任し、メンバーの構成も首相の「お友達」色が濃いと指摘されています。
懇談会は「日本人の美意識や、自然への畏怖、礼節、忍耐といった日本人の価値観が表出した日本の文化芸術について、その振興と次世代への保存継承及び国内外へのアピール」のためのプロジェクトを提案し、6月ごろに報告書をとりまとめるとしています。驚くべきことに、会合で津川氏は、日本映画の世界市場開拓のためとして、神の子孫が天皇家につながるとする神話の一つ「天孫降臨」のアニメ化まで唱えています。
こうした動きは安倍首相自身の歴史観とも結びついています。安倍氏は、著書『美しい国へ』(06年)のなかで「日本の歴史は、天皇を縦糸にして織られてきた長大なタペストリー」「日本の国柄をあらわす根幹が天皇制」といった見方を再三のべていました。
そして、第1次安倍内閣は06年、教育基本法を改悪し、教育の目標に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」態度を養う(第2条)ことを盛り込みました。
憲法まもる世論と運動を
自民党の「憲法改正草案」(12年)は、前文で日本国を「天皇を戴(いただ)く国家」とし、第1条で天皇を「日本国の元首」と明記しています。9条改悪=「国防軍」保持や「緊急事態条項」など「戦争をする国」づくりの狙いと一体のものです。
50回目の「建国記念の日」にあたり、特異な歴史観の押しつけを許さず、憲法をまもる世論と運動の発展を心から呼びかけます。
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