主張

「3分の2」発言

首相の改憲への執念許さない

 「参院選でしっかり訴え、国民的議論を深めていきたい」「自公だけでなく、改憲を考えている責任感の強い人たちと、3分の2を目指したい」―安倍晋三首相の改憲発言が相次いでいます。憲法の尊重擁護を義務付けられた首相が先頭に立って改憲をあおるというのは、まさに安倍政権の異常な憲法破壊政治を浮き彫りにしたものです。自民・公明の両党は衆院で3分の2を占めます。参院でも改憲派で3分の2の議席を狙うのは、いつでも改憲案が発議できるようにするためです。安倍政権の危険な改憲策動を、国民が力を合わせ阻止することが急務です。

改憲実現に手をつける

 かつてはどんな改憲論者が首相でも、憲法99条に明記されている憲法の尊重擁護義務を念頭に、政権を担当している間は改憲策動を控えるというのが常識でした。自民党政権のなかでも異常な右翼タカ派の安倍首相にはそんな配慮は一切ありません。改憲発言と改憲策動を繰り返し、歴代政権の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使容認に踏み出して戦争法制定を強行したうえに、今度は参院選を視野に明文改憲の条件づくりに踏み出してきたのです。

 首相が参院選で「3分の2」の議席を目指すと改憲案の発議に必要な議席獲得の狙いをむき出してきたことはとりわけ重要です。自民、公明の改選議席は59で、両党だけで3分の2の162議席に届くには86議席が必要です。しかし、首相が「改憲を考えている責任感が強い人たち」だと評価しているとみられる、「おおさか維新の会」や「日本のこころを大切にする党」を加えれば、非改選議席を計算に入れて4党で78議席取れば3分の2に届くことになります。

 自民党内には野党第1党を巻き込むべきだなどの声もありますが、首相周辺がかねて、おおさか維新の関係者などと連絡を取り合っていることは有名です。首相が「3分の2」の議席獲得目標を明示したのは、改憲への具体的作業に踏み出したことを示しています。

 安倍首相は改憲案の具体的内容について直近の記者会見や国会答弁では「これからの議論で深まっていく」というだけで明示していませんが、自民党には独自の改憲案(「日本国憲法改正草案」)があることを主張しています。昨年は国会でも「緊急事態条項」の創設などが突破口になるとの考えを示しました。

 自民党の改憲案は自衛隊を「国防軍」にすることや集団的自衛権を含む自衛権の発動を「妨げない」と明記しています。「緊急事態条項」も有事や大災害を理由に首相の権限を強化し、国会抜きで法律と同等の政令を制定し、国民の権利を制限できる内容です。首相が改憲内容を明示しないのは、国民に危険な内容を知られたくないからというほかありません。

明文改憲阻む共同広げ

 日本共産党の志位和夫委員長は党旗びらきのあいさつで、戦争法制定で明文改憲の必要がなくなるどころか、憲法と戦争法との矛盾が明文改憲への衝動を強めていると指摘しました。

 国民は戦争法に対しても、「読売」の調査で「評価しない」が51%を占める(11日付)など、納得していません。戦争法廃止とともに、安倍首相の明文改憲への異常な執念を阻止するため、世論と運動を広げることが重要です。