主張
原発回帰の危険性
道理ない再稼働に問題が山積
今年夏に九州電力川内原発1、2号機が再稼働したのに続き、四国電力伊方原発3号機でも再稼働の準備が進み、福井地裁の仮処分決定で再稼働が差し止められていた関西電力高浜原発3、4号機でも24日、地裁の決定が取り消され、再稼働への動きが本格化することになりました。いずれも安倍晋三政権の原発回帰の政策を背景に、原子力規制委員会での審査や地元自治体の同意を受けたものですが、原発再稼働は決して安全を保証しません。電力が不足しているわけでもないのに、電力会社の経営を優先した道理のない原発再稼働には問題が山積しています。
安全のお墨付きにならぬ
安倍政権は、原子力規制委が東京電力福島原発の事故後作った規制基準で「合格」と認めたことを原発再稼働の一番の理由にあげますが、川内原発や伊方原発でも、高浜原発でも明らかになったのは、規制基準は万能ではなく、たとえ基準に合格しても安全とはいえないことです。新しい基準は、地震や津波の想定などを見直しています。しかし世界有数の地震国で、想定以上の地震が起きない保証はどこにもありません。
川内原発ではとくに火山噴火対策への不十分さが、伊方原発では南海トラフ地震などへの対応の不十分さなどが問題になりました。高浜原発でも、福井地裁はいったん「新規制基準は緩やかにすぎ(る)」と再稼働を差し止めました。関西電力の異議で仮処分を取り消した今回の決定は、国と関電いいなりに基準は「合理的」だとしましたが、それでも「絶対的安全性は想定できない」と事故の危険性を認めています。規制基準にもとづく規制委の審査が、安全のお墨付きにならないのは明らかです。
とりわけ、今回の福井地裁の決定でさえ、事故の可能性が否定できない以上「避難計画等を含めた重層的な対策を講じておくことが極めて重要」としていることは重大です。規制委の審査では住民の避難計画は対象外となっており、川内原発でも伊方原発でも、避難体制の決定的な不足が指摘されています。福井県と京都府の県境近くに立地する高浜原発の場合も、いったん事故を起こせば京都府や滋賀県の住民も巻き込まれます。滋賀県も京都府も再稼働に同意していません。住民や自治体の安全が確保できない以上、再稼働は強行すべきではありません。
関西電力は高浜原発の再稼働に向け、ただちに3号機に核燃料を搬入、1月下旬の再稼働を目指しています。原発は運転を始めた途端、危険な使用済み核燃料がたまり続けます。原爆の原料にもなる危険なプルトニウムを含む使用済み核燃料は、再処理の見通しも立たず、行き場がありません。「トイレなきマンション」といわれるほど廃棄物対策の見通しが立たない原発の再稼働はやめるべきです。
原発に頼らなくても可能
九州電力の川内原発が再稼働する今年夏までの2年近く、全国の原発が停止していたのに、電力不足は起きませんでした。電力会社は火力発電に頼っているので燃料費や温室効果ガスの排出が問題だといいましたが、石油は価格下落が続き、節約などのおかげで温室効果ガスの排出も減っています。
原発再稼働は中止し、廃炉に向かうことこそ、安心で安全なエネルギー政策のためにも重要です。
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