夫婦別姓
夫婦同姓を強制する民法750条が憲法に違反するとして男女5人が国に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁大法廷は合憲の不当判決を出しました。判決は、夫婦同姓の規定は「家族の呼称を一つに定めることには合理性が認められる」とし、婚姻によって姓を変更することによる不利益は「氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得る」として合理化。夫婦別姓を希望する人に可能とする選択的夫婦別姓制度は「合理性がないと断ずるものではない」としながらも、子どもの名前などの制度のあり方は社会の受け止め方によるとして国会が判断するべきだとしました。
15人の裁判官のうち10人の多数意見。5人は個人の尊厳と両性の平等にもとづく婚姻を定めた憲法24条に違反するとしました。うち1人は、国会の立法不作為は違法だとして国家賠償が必要だと認めました。
5人が違憲としたことについて榊原富士子弁護団長は「現在の少数意見は未来の多数意見。ここからが立法に向けてのスタートです」と訴えました。
再婚禁止100日超は「違憲」
女性にのみ6カ月間の再婚禁止期間を設けている民法733条1項の規定が憲法が定める憲法14条(法の下の平等)、24条(両性の平等)に反するかが問われた裁判で、最高裁は「100日を超えて再婚禁止期間を定める部分は憲法に違反する」と認めました。しかし、上告人が前婚を解消した「平成20年(2008年)当時においてその違憲であることが明白であったとはいえない」として、国への賠償請求は認めず、上告を棄却しました。
裁判は、離婚後6カ月間、再婚できなかった岡山県在住の30代女性が、国を相手取り損害賠償を求めたもの。一審、二審とも原告敗訴でした。
原告側は、子どもの父親を定める(嫡出推定)には再婚禁止期間が100日で足りるとした上、100日以内でも女性のみに課される再婚禁止期間は違憲と主張していました。
再婚禁止期間100日超を違憲としたのは、裁判官13人の多数意見。2人が禁止期間自体が違憲とする意見を述べました。
夫婦同姓など最高裁判決について
日本共産党 広井副委員長が談話
夫婦同姓・女性のみの再婚禁止期間の最高裁判決について日本共産党の広井暢子副委員長が16日、発表した談話は次の通りです。
一、最高裁大法廷は、民法(家族法)の夫婦同姓の強制について合憲とする判決をおこなった。また、女性だけの離婚後6カ月の再婚禁止期間については、離婚後100日を超える禁止期間は違憲と判断した。女性のみの再婚禁止期間100日超を違憲としたことは一歩前進だが、再婚禁止期間は、女性への差別条項であり廃止すべきである。夫婦同姓の強制を合憲としたことは極めて不当な判決であり、厳しく抗議する。
一、夫婦同姓の強制を、15人の裁判官中5人は違憲であるとしたものの、多数意見による合憲とされた。判決は、いずれの姓を称するかは結婚する男女の協議にゆだねられており制度自体に「不平等が存在するわけではない」、「家族の呼称を一つに定めることには合理性」があるなどとし、憲法13条(個人の尊重)、14条(法の下の平等)、24条(両性の平等)に違反しないとした。「別姓」制度を、「家族の呼称廃止」であり、「家族の一体感を損なう」とする特定の家族観を容認したものである。
世界で夫婦同姓を義務づけている国は日本だけであり、国連女性差別撤廃委員会からは法律に残る女性への差別条項としてその撤廃を強く求められてきた。日本の司法の見識が問われる判決といわなければならない。
一、1996年、法制審議会は選択的夫婦別姓などの法整備をもとめるよう「答申」している。その後、歴代政府は、「答申」も国連女性差別撤廃委員会の是正勧告も無視しつづけてきたのである。女性の社会進出は大きく前進し、結婚や家族の実態も国民の意識も変化してきた。判決は、夫婦同姓の強制を合憲としつつも、国会での議論を促している。
政府は、民法改正を求める国民・女性たちの願いと運動を真摯(しんし)にうけとめ、憲法と国際法にたった改正に着手し、その責任を果たすことを求めるものである。
日本共産党は、個人の尊重、法の下の平等、個人の尊厳・両性の平等など、憲法の精神にたった民法改正に力を尽くす決意である。
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