主張
財政審の建議
“削減ありき”で医療を壊すな
財務相の諮問機関である財政制度等審議会が2016年度の政府予算編成に向けた建議(意見書)をまとめ、麻生太郎財務相に提出しました。歳出削減の対象に、もっぱら社会保障を挙げ、国民に必要な医療・介護の費用などを容赦なく削り込むことを要求しています。「社会保障を充実させる」といって、国民に消費税増税で負担を求めておきながら、予算編成のたびに社会保障費の抑制や削減ばかりが焦点になること自体、異常としかいいようがありません。国民の暮らしと安心を揺るがす社会保障費削減路線は、やめるべきです。
機械的カットが前面に
16年度予算編成では、すでに今夏の概算要求の段階で、社会保障費の伸びを15年度概算要求より1600億円も抑え込み6700億円の増加しか認めていません。24日の財政審建議は、この伸びをさらに削り、5000億円弱の増に圧縮することを要求しました。
安倍政権が今年6月に決定した「財政健全化計画」では、16年度から3年間で社会保障費の増加分を約1・5兆円に抑える方針を掲げています。それを「先送り」するな、と強く迫る内容です。
なかでも建議が、「重要課題の一つ」と明記し、「削減」の標的にしているのは、公的医療保険財政から医療機関に支払われる診療報酬です。16年度は2年に1度行われる診療報酬改定の年にあたるためです。患者がかかる医療の範囲や質を左右する診療報酬を「削減ありき」で機械的に引き下げることは、きわめて乱暴です。医療技術の質を保つために必要な報酬が手当てされなければ、国民は安心して医療機関にかかれません。かかりたい医療が保険から外されてしまえば、患者の負担は深刻です。
財政審の建議は、薬の値段とともに医師の技術料も含めて「マイナス改定が必要」と強調しました。技術料まで踏み込んだマイナス改定が仮に強行されれば、医師不足などで地域の医療機関が撤退するなどして「医療崩壊」を加速させた06年の改定以来です。またもや国民の健康と命を危機にさらそうというのか。まさに無反省です。
財政審建議は、安倍晋三首相の政権復帰後の予算編成で、13~15年度と連続して社会保障費の伸びを年5000億円程度に抑え込んだことを示し、予算圧縮は可能であるかのようにいいます。
しかし、日本の社会保障費は、高齢者人口の増加や、医療技術の進歩・改善などにより年1兆円規模の「自然増」が必要とされています。それを無理やり半分に抑え込んだ結果、13年度は生活保護費の大削減、14年度は診療報酬の実質マイナス改定が押しつけられました。15年度も、介護報酬を過去最大規模で削減し、特別養護老人ホームなどの経営に打撃を与え、サービス利用者に深刻な影響を広げています。年金も実質カットです。こんな社会保障破壊が続けられては、国民の暮らしは、まったく成り立ちません。
政治の姿勢を変えてこそ
診療報酬を1%引き下げて削減できる国費約1000億円は、トヨタ自動車1社の研究開発減税1200億円とほぼ同額です。大企業減税の大盤振る舞いをやめれば、社会保障費財源は確保できます。大企業中心の政治から、国民の暮らしを最優先にする政治への転換がいよいよ必要です。
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