このNPO法人は「宇宙利用を推進する会」(東京都千代田区)です。理事長は、2009年まで防衛事務次官だった増田好平氏。
会員は、NECや三菱商事、三菱電機、IHI、IHIエアロスペース、日立製作所、川崎重工業などとなっています。宇宙産業で国内トップの三菱重工業も賛助会員です。
同NPOの活動報告書などによると、設立は09年2月。その前年、自公政権は宇宙基本法を成立させ、平和目的に限るとした日本の宇宙開発の軍事利用に道を開きました。
「衛星監視向上を」
NPOの活動は、関係機関への提言など。13年度の活動報告では「安全保障の宇宙利用に関し(中略)関連省庁・機関、自民党等に海洋と宇宙利用に関する提言等を実施した」などとしています。
NPOが13年12月に出した提言書では「防衛省並びに海上保安庁等の宇宙利用を促進すべきである」と主張。監視衛星を「軌道の異なる複数の衛星9―12機で構成し、監視頻度を向上」させるよう求めています。
増田氏は、同NPOから役員報酬を得ており、その原資は、最低でも年間100万円以上の法人会費です。
ビジネスチャンス
本紙の取材に、同NPOの業務部長は「提言は防衛省にも配ったはずだ。会員にとって(会のメリット)は、提言を通じて宇宙産業が大きくなり各社のビジネスにつながっていくことだ。そのためにも宇宙予算をふやしてもらわないといけない」と語ります。増田氏を理事長にした理由は「安全保障ということで、防衛省のトップに来ていただいたのだと思う」と説明します。
軍事需要あてこむ
総合研究大学院大学名誉教授 池内 了さん
日本の宇宙開発は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が一手に担い、防衛省と密着しており軍事化の流れは明確です。宇宙開発戦略本部が11日に公表した工程表改定案でも防衛省とJAXAの連携を打ち出しています。宇宙利用の大きな需要先は軍事です。政府や財界は、日本の宇宙開発技術を発展させ、他国に輸出することを狙っています。
また、宇宙や海洋の全ての情報を一元化して持ちたい米国を、日本が補完・従属するスタイルがここ数年で強化されています。
この体制が、集団的自衛権に結びつく先行モデルではないかと私はみています。このNPO法人が防衛省の元最高幹部をトップに置くのは、こうした流れを受けたものだと思います。
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