政治考

右派連合VS.共産 鮮明に

「安倍氏自身が最大の弱点」

 安倍自公政権が復活してから、最初の国会が始まりました。発足から1カ月余で、内閣支持率は上昇したものの、抱える矛盾は深刻です。担当記者で話し合いました。

記者座談会

 A 「暮らしと平和を踏みつぶす暴走を開始していることは大変危険な動きだが、同時に致命的な弱点をもっている」。日本共産党の志位和夫委員長が安倍政権について、国会開会日にこう指摘したことが印象的だ。

  直面する課題に解決策をもたず、危機をつくりだした張本人の反省も自覚もない、さらには国民多数の声に背くというのが「弱点」の中身だが、この1カ月余でこの「弱点」は鮮明だね。

経済政策的外れ

 C 今年度補正と来年度当初案で、いずれも過去最大規模の予算案を組んだ。大型公共事業と軍事費には大盤振る舞いだが、社会保障費削減の突破口と狙う生活保護費削減や年金減額、35人学級実施見送りなど国民生活には散々な中身だ。

 E 高齢者の終末期医療で「さっさと死ねるようにしてもらわないと困る」とした麻生副総理の暴言は政権の本音だ。

  最大の課題とするデフレ不況の打開策は原因の分析がないうえ、的外れだ。金融緩和、公共事業、成長戦略と「三本の矢」とも破綻済みの「矢」だ。民主党から「自分たちの政権もやってきた」「焼き直しだ」と指摘された。

 D 2%の物価上昇目標にも「実現はとても困難」との指摘が専門家からあいついでいる。「三本の矢」の結果、借金の山が残ったり、金利が上昇したりで、「財政危機、バブルのいずれのケースをたどるにせよ、相当に危険な賭けのように思われる」(『エコノミスト』2月5日号)との批判も出ている。

「対立を先鋭化」

 E 外交問題でも、元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は、会員制情報サイトで「安倍政権の安保政策『最大の弱点』は安倍氏自身」と指摘した。「憲法を『戦後レジーム』として否定し、戦争への『反省』を『自虐史観』として排斥する安倍氏の国家像(自己認知)は、対立を先鋭化する」と警告する。

  実際、ニューヨーク州議会では日本軍「慰安婦」問題で「20万人が軍に強制され売春させられた」との日本批判の決議が採択された。

  この問題では、志位和夫委員長が「文書がないからといって強制がなかったは成り立たない」と追及し、安倍首相も「政治問題化させない」と答弁した。軍の関与と強制性を認めた「河野官房長官談話」を見直すとした自らの「持論」を封印した。

  意識しなければならないのは、国際世論だけではない。国会開会日には、沖縄から復帰後最大の上京団が「オスプレイ配備撤回・普天間基地の閉鎖撤去」を安倍首相に直訴した。「憲法を守れ」と開かれた院内集会や賃上げ・増税中止・原発ゼロなど国民諸要求の実現を求めた集会も、かつてない盛況だった。国民は民意に背く政治を許さないという決意を感じた。

 D マスメディア関係者は、代表質問をみて「自民、維新、みんなの右派連合と共産党の対決という構図がクリアになっている」と指摘していた。

  民主党は「3党合意」に縛られた「増税与党」だし、維新・みんなは「改憲与党」だ。安倍内閣の「三つの致命的弱点」に切り込み、政治の根本的転換を迫る―日本共産党への期待は大きいね。

民意に背く巨大与党の矛盾

 A 危機をつくりだした張本人としての反省がないという点はどうだろう。

原発の新増設も

  なんといっても原発推進姿勢だね。民主党政権の「2030年代原発稼働ゼロ」方針を「ゼロベースで見直す」として再稼働を加速させ、原発の新増設まで容認しようとしている。

 E なにしろ、経済財政諮問会議には原発メーカー・東芝の社長を入れたり、首相の政務秘書官には大飯原発再稼働で暗躍した経産省官僚を据えたり、原発推進布陣だからね。

  代表質問初日には、電気事業連合会と経産相との懇談が開かれ、経産相が「前政権の政策はしっかり見直したい」と約束した。

  それでも、志位氏が福島原発事故に対して、安倍首相が「A級戦犯」だという証拠を示して追及したら、さすがに首相も「心からのおわび」を初めて表明せざるを得なかったね。

  第1次安倍政権のときに、日本共産党の吉井英勝衆院議員(当時)が質問主意書で「巨大地震の発生で全電源喪失となった場合の検討をしているのか」とただしたのに対し、安倍首相が答弁書で「安全の確保に万全を期している」と回答したことだね。

  的確に弱点をつくなら、安易に原発推進など口にできない証拠だよ。

改憲・TPP…

 C 国民多数の民意に背くという点でも、改憲や環太平洋連携協定(TPP)、オスプレイ配備や米軍新基地問題など、安倍内閣は深刻な矛盾を山と抱えている。

 E 憲法改悪については、所信表明演説では触れなかったが、「維新」や自民党の改憲派に問われて、改憲手続きを定めた96条からはじめると明言し、「国防軍」創設の狙いも明らかにした。

 D しかし、世論調査では、9条改憲反対が過半数だし、改憲反対が賛成を上回っている。中国や韓国などアジア諸国との関係でも、歴史問題とあわさって懸念を広げている。

  「日経」(1月28日付)は「親米3カ国 地域の火種」とする記事を掲載し、「欧米からみれば、日本は韓国や中国との関係悪化によって、アジア地域に緊張をもたらす存在とも映る」と指摘した。米国にも日中・日韓関係の悪化は戦略上もよくないとのいら立ちがある。

 C 首相が初訪問した沖縄では、抗議の声が出迎えた。地元紙は「どうぞ正確に『声』を聴いていただきたい。そうすれば、沖縄はもう元には戻らない、県内移設を拒否する県民の民意は不退転だと容易に気付くでしょう」と書いた。

 E TPPでも農業者をはじめとする国民の厳しい批判が自民党内にも反映し、反対派が集会を開いた。首相も「参院選までに方向性を出す」といったん発言したが、すぐに撤回せざるを得なくなった。

弱い国民的基盤

  先の総選挙で自民党は公明党とあわせて衆院325議席の巨大与党となったが、国民的基盤は非常に弱いという指摘も多い。2005年総選挙後の小泉政権や09年総選挙後の民主党300議席とは違う。

  自民党シンクタンクの元事務局長の講演を聞いたが、「自民党の支持基盤は09年からまったく回復していない。国民の自民党離れ、自民党批判の動向は当時とほとんど変化がない。しかも、自民党の改革もストップし、古いバラマキや官僚依存に回帰した。このままでは、参院選の比例では勝てない」と指摘していた。

 E 自民党関係者も「スピード感をもって結果を出さないと、期待が大きいだけに反動がくる。急激な変化を予測できない」と厳しい表情を見せる。

  野党性を失った民主党、改憲や社会保障切り捨てをけしかける「維新」やみんななど、安倍自公政権に対決する政党ではない。いよいよ自民党VS日本共産党という対決構図が非常に鮮明になっている。「防波堤の党」「変革者の党」「国民共同をすすめる党」という国民的役割を果たす日本共産党の使命がますます大きくなっているね。