主張

法人税減税上積み

破綻した政策を繰り返すのか

 安倍晋三政権が経済政策「アベノミクス」の「第2ステージ」として持ち出した国内総生産(GDP)600兆円などを目標にする「新3本の矢」をめぐって、そのために法人税減税を上積みするなどの検討が進んでいます。「アベノミクス」で大企業の利益を増やし、法人税を減税しましたが、その結果は大企業の内部留保や手持ちの資金を増やしただけで賃金の引き上げや設備投資には回っていません。法人税減税の拡大も、大企業のもうけを増やせばやがて国民を潤すという破たんした「トリクルダウン」(したたり落ち)政策の繰り返しです。

安倍首相が熱心に主張

 法人税減税の上積みに最も熱心なのは安倍首相で、今月初めの講演でも、「法人実効税率を数年で20%台にまで引き下げ、国際的にそん色のない水準に改革する。来年は0・8%引き下げると決めているが、上乗せしてさらに引き下げる」と明言しました。「アベノミクス」の「第2ステージ」と称してGDP600兆円の実現などを検討している政府の経済財政諮問会議の最近の会合でも首相は、「2016年度の税率引き下げ幅を確実に上乗せし、早期に20%台に引き下げる道筋をつける」と発言しています。

 法人税減税はもともと安倍内閣が熱心に取り組んできたものです。昨年初めには消費税の税率を4月から8%に引き上げる一方、法人に課税される国税と地方税を合わせた法人実効税率を当時の約35%から15、16年度の2年がかりで引き下げる計画を持ち出し、国民の反対を押し切って強行しました。法人実効税率は15年度には2・51%引き下げられ、16年度には31・33%にまで引き下げられることがすでに決まっています。

 法人税減税の拡大は16年度の引き下げ幅をさらに引き上げようというもので、既に決まっている約0・8%にさらに0・5%程度上積みすることが検討されています。減税はそれ以降も続き、早急に20%台を実現するというのが安倍政権の計画です。

 法人税は赤字の企業には課税されないので、減税で潤うのはほとんどが業績好調の大企業です。経団連など財界・大企業は減税の加速を要求してきました。法人実効税率を1%引き下げるには約5000億円の財源が必要です。財務省などは大企業を対象にした外形標準課税を中小企業にまで拡大するなどでねん出しようとしていますが、それ自体中小企業に負担を転嫁するものです。だいたい国民には消費税増税を押しつけながら大企業には減税するというのは国民の納得が得られません。

利益増でも賃金に回らぬ

 3年近くにわたった「アベノミクス」の結果、大企業の利益は史上最高水準なのに、労働者の賃金は伸び悩んで消費は増えず、企業の内部留保や手持ちの現金・預金ばかりが増えたのが現実です。安倍政権発足前の12年度から14年度までに大企業の経常利益は16・1兆円増えたのに、従業員の給与は0・3兆円しか増えず、企業の内部留保は49・9兆円も増えています。麻生太郎財務相も法人税を減税しても企業の手元資金が積み上がるだけではと指摘するほどです。

 破綻した「トリクルダウン」の政策はやめ、暮らしを応援する政治に転換することこそ、急務です。