輸入食品増加と検査体制/食の安全脅かされる
関税が撤廃され、輸入食品が増加すると、食の安全への懸念が高まります。紙氏は、TPP交渉のなかの日米協議では、日本で認められていない食品添加物の承認について、日本が取り組むことが「合意」文書に明記されたことを指摘。米国の巨大農産物企業が、遺伝子組み換え食品の表示義務の規制緩和を要求していることなどもあげ、「食の安全が脅かされる」とただしました。
紙 日本で指定していない食品添加物を認めたり、米国から圧力をかけられるのではないか。
安倍晋三首相 TPPでは、締約国が自国の食品の安全を確保するために必要な措置を取る権利を認めている。
紙氏は、日米協議はそうなっていない、TPPの関連文書をすべて公開するべきだ、と追及。すでに、輸入食品が急増しているのに、食品衛生監視員が増員されないため、9割の輸入食品が未検査で市場に流通している実態(グラフ)を告発して、「TPPによって輸入食品が増えれば、いっそう検査率が低下し、食の安全が脅かされる」とただしました。
甘利明経済再生担当相は「輸入量が増えるのに比例して(検査)体制を整備していく」と答えました。
自動車関税撤廃の先送り/工業製品も米に譲歩
日本は、米国に要求されるままに、工業製品分野でも多くの譲歩を重ねました。日本車に対する米国の関税(2・5%)は、15年目から削減が開始され、撤廃されるのは25年目。トラックについては30年目に関税が撤廃されます。紙氏は「米国は関税撤廃の先送りだけではなく、対抗措置も準備している」と指摘。輸入が急増した場合に輸入を制限する「特別セーフガード」の発動を、米国には、複数回、関税撤廃の10年後まで認めているとして、次のようにただしました。
紙 貿易は、各国の経済主権を尊重し、対等、平等、互恵の立場で互いの国民にとってプラスになるよう行うべきだが、日本の交渉は米国いいなりではないか。
首相 (日本の)自動車の関税は最も長い期間で撤廃すると約束した。
紙氏は、業界からは25年かけて撤廃しても影響がないとの声があがっている、結局アメリカ言いなりではないかと日本の交渉姿勢を批判しました。
重要5品目で関税撤廃3割/国会決議に違反する
国会決議が交渉の対象にしないよう求めた重要5品目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖)では、586品目のうち174品目、約30%で関税が撤廃されます(表)。関税が維持された品目も、国別の輸入枠を新設し、関税を段階的に削減するなど輸入を拡大します。紙氏は牛肉の関税が現在の38・5%を16年目には9%へと大幅に引き下げられる問題に言及。輸入牛と肉質が競合するホルスタインから生まれる肉牛(雄牛)にも影響がでるとして、「TPPという人的原因で仕事ができなくなる」との北海道の畜産農家の声を紹介しました。
紙 2016年以降、セーフガードも4年間発動しなければ廃止になる。これも「10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃を認めない」とした国会決議に違反する。
甘利担当相 守るだけではだめだ。攻勢をかけて外にでるようにしないと。
紙 現状をみるべきだ。北海道の酪農はすでにぎりぎりのところにいる。乳製品で打撃を受け、それを補ってきた肥育の雄牛までだめになったら崩壊です。全く分かっていない。
5品目以外も関税撤廃/自民は公約違反
TPPは、コメ、牛肉だけでなく畑作においても日本農業に影響します。日本が輸入を受け入れるTPP枠が新設され、小麦の25・3万トンはじめ、砂糖の原料になるテンサイ、でんぷん原料用も対象とされ、連作障害を避けるため北海道で行われてきたこれら輪作体系は、輸入が増えたら崩されます。「冬が終わると必ず春が来る。春が来るからがんばれる。TPPではその希望がそがれる。この地方は崩壊し、子どもの未来もない」―紙氏は十勝地方のある町長の言葉を示し、「地域経済と子どもの未来を奪うことになる」と迫りました。
紙氏はまた、重要5品目以外にも、小豆など畑作物、果物、畜産品、木工品、水産物の多岐にわたる品目が関税撤廃となる事実を突きつけ、「全国の農家では『青天のへきれき』と衝撃が走っている。これで約束を守ったとどうしていえるのか」と批判しました。
さらに紙氏は、この間の政府の姿勢は、▽自動車の目標数値受け入れ▽BSE(牛海綿状脳症)検査・食品安全基準の緩和▽ISDS(投資家対国家間の紛争解決条項)賛成などであり、自民党の公約=“守るべき6項目”は「すべて破たんした」と断じました。
日本が批准しなければ発効せず/たたかいはこれから
政府はTPP署名後の国会で批准すると言っていますが、日本でもアメリカでも批判が噴出しています。紙氏は、たたかいはこれからだと強調しました。紙 発効条件について聞く。日本が批准しなければTPPは発効しないのではないか。
甘利 日本が入らないと発効しない。
紙氏は「TPPの内容を国民が知れば知るほど、批准は難しくなる」と強調。TPP交渉は「大筋合意」しても、決着したわけではなく、これからの日本の世論と国会議員の役割が大事だと述べ、断固撤退を求める決意を表明しました。
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