主張

杭打ちデータ偽装

安全確保へ検査体制の整備を

 横浜市の大型マンションの傾きに端を発して明らかになった旭化成建材の杭(くい)打ち工事のデータ偽装は、公営住宅や学校など全国各地の公共施設にまで波及し、国民は不安を募らせています。横浜市のマンションの現場責任者だけでなく旭化成建材の社員数十人が偽装に関与した疑いや、同社以外の工事でも偽装を指摘する証言が報じられるなど建設業界の構造的問題として広がりをみせています。

民間任せで問題見抜けず

 建物の安全性について、建築基準法は「国民の生命、健康及び財産の保護を図る」として、地震などに対して安全な構造にするために必要な基準を定め、それに適合させることを求めています。

 元請け建設業者には、施工管理を行う監理技術者を置き安全を確保する責任があります。今回の問題では、建物の安全にとって最も重要な基礎杭が支持層(強固な地盤)に届いておらず、杭を固定するコンクリートのセメント量のデータも偽装していました。施工主(元請け)の三井住友建設の監理責任が果たされていたとはいえません。なれ合いの疑いも指摘されています。

 建築士には、建築法令や条例で定める基準に適合するよう設計、監理することが義務付けられています。今回はこうした安全確保のための法制度がまったく機能していなかったことを示しています。

 建物の安全性を確保すべき行政が、偽装を見抜けなかったことは深刻です。1998年の建築基準法改定で、それまで地方自治体の建築主事が行っていた建築確認検査を、民間の「指定検査機関」でも可能にするなどした建築行政の規制緩和が背景にあります。施工主である多くの建設会社は、自社と関係が深い民間検査機関に検査を任せているのが実態です。

 日本共産党は、こうした民間任せの“丸投げ”が「安かろう、悪かろう、極端な場合は手抜き検査ということが横行しないか」と警告していました(98年5月15日衆院建設委員会=当時)。その後、2005年におきたマンション耐震強度偽装事件は、民間任せの危険性を浮き彫りにしました。今回大規模なデータ偽装が再びおこったことは、問題を事実上放置してきた国、自治体の責任が問われる事態であることは明白です。

 建設業界の重層下請け構造も、偽装発見を困難にし、責任の所在を不明確にしています。横浜のマンションでは、販売主の三井不動産レジデンシャルが工事を発注し、元請けの三井住友建設が日立ハイテクノロジーズに下請けさせ、さらに旭化成建材へ下請けさせていました。販売期日を優先する元請けが、完成を急がせたことが、下請けの手抜きを助長し、偽装を見抜けなかった原因と考えられます。

国・自治体は責任果たせ

 販売主、元請け、下請けなどは全容の公表、原因と責任の究明を急ぐべきです。住民への被害補償など誠意ある対応も必要です。

 国土交通省は旭化成建材へ立ち入り検査を行い、再発防止策を検討する有識者委員会も立ち上げました。国・自治体は、徹底解明とともに、再発防止にむけて安全性確保のための建築確認検査についての体制整備、中立・公正な第三者による検査体制の確立など抜本的改善を図り、国民への責任を果たすことが求められます。