主張
南スーダンPKO
任務拡大で初の戦死者出すな
安倍晋三政権は戦争法の成立を受け、アフリカ・南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加している自衛隊の任務を拡大し、「駆け付け警護」などを可能にすることを検討しています。南スーダンでは、政府と反政府勢力との武力衝突で事実上の内戦状態となっています。実際に「駆け付け警護」などが行われれば、自衛隊員が南スーダンの国民に銃口を向けて発砲・殺害したり、自衛隊員も攻撃を受けて戦死者が出たりする危険があります。自衛隊員が海外の戦闘で「殺し、殺される」という戦後初めての事態を絶対に起こさせてはなりません。
「駆け付け警護」で戦闘に
「駆け付け警護」は、PKOに参加している他国部隊などが武装勢力に攻撃された際、自衛隊が現場まで駆け付け、武器を使って守るという任務です。安倍政権が成立を強行した戦争法によって、自衛隊と他国軍隊による宿営地の「共同防衛」などと併せて初めて可能になりました。国会審議では「停戦合意が崩れれば、たちまち深刻な混乱を招き、結果的に憲法違反の武力行使に至る恐れが大きい」(宮崎礼壹・元内閣法制局長官)などと重大な問題点が指摘されていました。
南スーダンに派遣されている自衛隊部隊の「駆け付け警護」や宿営地の「共同防衛」については、日本共産党が暴露した自衛隊・統合幕僚監部の内部資料(5月)に、戦争法の成立を前提に準備を進めることが明記されており、大きな問題になりました。中谷元・防衛相が内閣改造後の記者会見(7日)で戦争法の施行に向け「真摯(しんし)に新たな任務に向き合って、適切な実施体制の整備に最善を尽くす」と表明し、準備を急ピッチで進めようとしていることは重大です。
南スーダンに展開する国連PKO部隊(UNMISS)への自衛隊派遣は2011年11月、当時の政府が「武力紛争が発生していない」との判断に基づき決定し、翌12年1月から陸自部隊が活動を始めました。しかし、13年12月には南スーダン政府と反政府勢力の武力衝突が起こり、特定民族などへの攻撃にも発展し、各地で戦闘が激化しました。その後、複数回、停戦が合意されたものの、そのたびに戦闘が再開され、今年8月下旬の停戦協定後も戦闘の発生している地域があるとされます。国内避難民は200万人を超え、事実上の内戦状態が続いています。
深刻な武力紛争が起こっているのに、安倍政権は「反政府勢力は系統だった組織性を有しているとは言えない」「UNMISSの活動地域で武力紛争が発生したと考えていない」(中谷防衛相)などとし、自衛隊の派遣継続に固執しています。その上、「駆け付け警護」や宿営地の「共同防衛」の任務が加われば、自衛隊に戦闘の危険が高まるのは明白です。
戦争法廃止いよいよ急務
NGO(非政府組織)関係者や専門家は、武装勢力は住民の中に紛れて行動することが多く、自衛隊員が非戦闘員の住民を誤射する恐れがあると警告しています。
戦争法は、「駆け付け警護」や宿営地の「共同防衛」への任務拡大について国会の承認を必要としない仕組みとなっており、政府の判断任せです。その意味でも、戦争法そのものを廃止することはいよいよ急務です。
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