主張
戦争法案「合理化」
破綻した弁明で強行するのか
安倍晋三政権は、戦争法案の今週中の参院採決・成立の強行を狙っています。しかし、法案の明白な違憲性、国民多数の反対世論を無視した民主主義破壊、「自衛隊の暴走」を許すシビリアンコントロール(文民統制)の欠如など、あらゆる点で強行が許される状況ではありません。安倍政権が決まって持ち出す「法案は日米同盟の抑止力を高め、戦争を未然に防ぐものだ」「『戦争法案』ではなく、国民の命と平和な暮らしを守る平和安全法制だ」などという弁明も完全に破綻しています。
日本に攻撃の矛先が
戦争法案が可能にする集団的自衛権の行使とは、日本が直接、武力攻撃を受けていないのに、「存立危機事態」を口実にして、第三国による他国への武力攻撃を排除するために日本が武力を行使するというものです。
安倍政権は「限定」した集団的自衛権の行使だから違憲ではないと言い逃れようとします。これに対し、日弁連憲法問題対策本部の伊藤真弁護士(副本部長)は、8日の参院安保法制特別委員会の参考人質疑で「たとえ要件を解釈で厳格に限定したとしても、その効果は、日本が武力攻撃されていない段階で日本から先に相手国に武力攻撃をすることを認めるもの」であって「敵国兵士の殺傷を伴い、日本が攻撃の標的となる」と指摘し、「日常用語ではこれを『戦争』と言います」と厳しく批判しました。「国民の命と平和な暮らしを守る」どころか、文字通りの「戦争法案」に他なりません。
「法案が抑止力を高める」という主張も通用しません。元内閣法制局長官の大森政輔氏は同日の参考人質疑で「わが国が集団的自衛権の行使として武力行使をしている第三国に武力攻撃の矛先を向けると、その第三国は、反撃の正当な理由の有無にかかわらず、事実上、わが国に対し攻撃の矛先を向けてくることは必定で、集団的自衛権の抑止力以上に紛争に巻き込まれる危険を覚悟しなければならず、バラ色の局面到来は到底期待できない」と力説しました。
この問題では既に元内閣法制局長官の阪田雅裕氏が衆院の参考人質疑で「集団的自衛権を行使するということは進んで戦争に参加するということであり、敵となる相手国にわが国領土を攻撃する大義名分を与えることでもあるから、国民を守るというよりは進んで国民を危険にさらすという結果しかもたらさない」と指摘しています(6月22日)。歴代の内閣法制局長官の繰り返しの警告に耳を傾けない安倍政権の姿勢はまったく異常です。
米国がベトナム戦争やイラク戦争のような無法な先制攻撃の戦争に乗り出した際、日本は言われるままに集団的自衛権を発動し、武力を行使することになる―。ここに、集団的自衛権行使の最も現実的な危険があることは明白です。
反対の声に反論不能
メディアの世論調査に示されるように、政府の説明に圧倒的多数の国民が納得していないのは当然です。自民党内では「十分に(国民の)理解が得られていなくともやらなくてはいけない時がある」(高村正彦副総裁)などという居直りの声も上がっています。安倍政権が戦争法案反対の声に反論不能に陥っていることを示すものです。戦争法案は廃案しかないことはいよいよ明らかです。
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