参院安保法制特別委員会は19日、戦争法案の成立を前提に詳細な部隊運用計画を記載していた自衛隊統合幕僚監部の内部文書が国会提出された後、最初の審議を行いました。中谷元・防衛相は冒頭、「文書は私が指示した範囲内」であり、「内容に問題はない」と強弁しました。
11日に内部文書を暴露した日本共産党の小池晃議員は、「問題がない」どころか、国会や国民にも知らされていない重大な内容が含まれていると指摘。4月27日に合意された新たな日米軍事協力の指針(ガイドライン)で常設するとした「同盟調整メカニズム」内に、「軍軍間の調整所が設置される」と明記されていることをただしました。
中谷氏は、「(軍軍間の調整所は)すでに存在している」と述べ、すでに設置されていることを初めて明らかにしました。さらに「軍軍間」とは「自衛隊と米軍だ」と答え、自衛隊を「軍」と記していることを認めました。
小池氏は、「自衛隊を『軍』とする文書を、大臣が内容を問題ないというのは大問題だ」と強調。「軍軍間の調整所」はガイドラインにも法案にも書かれておらず、国会答弁でも言及していないことを指摘し、「軍を自認するにいたった自衛隊のもと、国会にも明らかにしないまま、どんどん進んでいるのは極めて重大な事態だ」と批判しました。
小池氏はさらに、これまで政府が存在を認めてこなかった日米共同作戦計画について、同文書が「対外的には明示されていませんでした」と述べていることをあげ、「実際にはすでに存在していたことだ」と追及。中谷氏は「(共同計画は)日米の検討で精緻(せいち)化された結果、保持されるにいたった」と述べ、共同計画の存在も初めて認めました。
さらに小池氏は、内部文書が、他国の領土問題への介入につながりかねない、南シナ海での「情報収集、警戒監視及び偵察」(ISR)について「検討」と書き込んでいることを明らかにしました。
小池氏は、内部文書に示されている一連の検討事項について、「こんなことは、一度もまともに説明してこなかった。これでは国会審議は通過儀礼にされてしまう。与野党を問わず、党派を超えて怒らなければならない」と呼びかけました。その上で、「中谷大臣、安倍晋三首相の責任は重大だ」と述べた上で、河野克俊統合幕僚長の証人喚問を求めました。
自衛隊文書「大臣答弁に反する」
小池氏、中谷防衛相を追及
中谷元・防衛相は19日の参院安保法制特別委員会で、統合幕僚監部が作成した内部文書について、「私の指示をふまえて法案の閣議決定後の5月下旬に作成したもの」と認めました。内部文書は、日本共産党の小池晃議員が11日の同委で暴露したものです。中谷氏は「(戦争)法案成立後に具体化していくべき検討課題をあらかじめ整理し、主要部隊の指揮官等に理解してもらうことを目的に、内部部局と調整しながら作成した」と説明しました。
小池氏は、中谷氏が11日の同委では内部文書について、「法案が成立した後、これは検討を始めるべきもの」と答弁していたことを指摘。大臣指示で作られていたのなら「大臣自身の答弁にも反する」とただしました。
中谷氏は「統合幕僚監部として当然必要な分析・研究を行った」などと答弁。小池氏は、内部文書は、分析・研究にとどまらず、「平和安全法制に基づく主要検討事項」となっており、国会無視の暴走だと批判しました。
中谷氏は「(文書には)実際の運用要領の策定、訓練の実施、関連規則の制定は含まれていない」として、「内容に問題はない」と主張。小池氏は「『運用要領の策定』などは、検討を通り越した法案の具体化ではないか。苦し紛れのごまかしだ」と批判しました。