主張

戦争法案・内部文書

この暴走は言い逃れできない

 防衛省が、戦争法案の成立を前提に、自衛隊の部隊編成計画まで記載している統合幕僚監部の内部文書が存在することを認めました。しかも、同文書が、中谷元・防衛相の指示によって、国会での審議が始まってもいない段階で作成されていたことも明らかにしました。国民の反対世論や国会審議を無視した、戦争法案成立ありきの言語道断の暴走であり、安倍晋三政権の責任は極めて重大です。

首相、防衛相の責任重大

 問題の文書は、「『日米防衛協力のための指針』(ガイドライン)及び平和安全法制関連法案について」と題するもので、日本共産党の小池晃副委員長が独自に入手し、参院安保法制特別委員会(11日)で暴露しました。

 その中には「ガイドライン及び平和安全法制関連法案を受けた今後の方向性」と題する「取扱厳重注意」の文書もあり、戦争法案の8月「成立」・来年2月の「施行」を前提に、12月には陸上自衛隊中部方面隊から南スーダンPKO(国連平和維持活動)に部隊を派遣し、来年3月からは「駆け付け警護」など「新法制に基づく運用」を始めるなどとした、詳細な日程表まで記載されています。

 看過できないのは、同文書が、陸・海・空自衛隊の各主要部隊の指揮官が参加した、5月26日のビデオ会議で使用された説明資料だったということです。5月26日は、衆院本会議で戦争法案の質疑が初めて行われた日です。法案審議がまさに始まったその日に、8月の法案成立を前提にした計画を全自衛隊規模で徹底していたということであり、国会無視の暴走というほかありません。

 防衛省の説明によると、文書は、法案の閣議決定翌日の5月15日に中谷防衛相が出した指示に基づいて作成されたといいます。中谷氏は小池氏の追及に、「国会の審議中に法案の内容を先取りするようなことは控えなければならない」「中身の運用の検討は当然、法案が通った後の作業になる」と答弁しており、その監督責任はいよいよ重大です。自衛隊の最高指揮官である安倍首相も責任は免れません。

 文書は、表題が示すように、日米両政府が4月に合意したガイドラインと戦争法案との関係を説明したものです。ガイドラインの内容には「既存の現行法制で実施可能なもの」と「(戦争)法案の成立を待つ必要があるもの」とがあるとし、戦争法案がガイドラインの「実行法」であることを示しています。

 日米軍事協力の拡大・強化のために違憲の戦争法案の成立が狙われていることは明白です。憲法を日米同盟に従属させる本質を持つ法案は廃案しかありません。

国会で真相の徹底究明を

 文書は、米軍と自衛隊に関わる政策や運用面での調整を行う「同盟調整メカニズム」を常設し、その下に「軍軍間の調整所」を設置し、「日米共同計画」を策定すると明記しています。自衛隊を「軍」と表記し、日米共同司令部を創設するという、憲法に抵触する内容ですが、公表されたガイドラインでは明らかにされていません。

 防衛省は法案の内容説明のための資料だとしていますが、文書は法案の成立を受けた「今後の進め方」まで検討しており、言い逃れは不可能です。河野克俊統合幕僚長の証人喚問をはじめ、国会での徹底した真相究明が必要です。