岩礁破砕調査実施も表明
菅義偉官房長官は4日の記者会見で、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設に伴う海上掘削(ボーリング)調査などの作業を10日から9月9日までの1カ月間、全面停止すると表明しました。県民の世論とたたかいによって、米軍新基地建設問題は大きく局面が動きました。政府が辺野古埋め立ての法的根拠としている前沖縄県政による埋め立て承認について、県の第三者委員会が「法的に瑕疵(かし)がある」と結論付けたことを受けての措置。翁長雄志(おなが・たけし)知事が埋め立て承認を取り消せば、作業は違法状態となります。政府はこれを避けるため、やむなく停止に踏み切ったものです。
政府は、辺野古新基地が「普天間基地問題の唯一の解決策」との姿勢を変えていません。ただ、「辺野古新基地阻止」を掲げる翁長県政や県民の意向を無視して、「粛々」「淡々」と進めることはもはやできない、新しい段階に入りました。
政府の発表を受け、翁長知事は県庁で記者会見を行い、停止期間を「集中協議期間」にすると表明。政府との協議会を設け、第1回会合の日程を具体化したいとの考えを示しました。翁長知事はあくまで「辺野古への基地建設は不可能という中から、いろいろな話をしたい」と述べました。
同時に、「話し合いで解決の糸口が探れるような可能性があれば、そのための努力は惜しまない」とも述べました。
協議期間中の条件として、県は政府に、ボーリング調査の停止、調査を行うためのスパット台船の撤去、運搬車両の運行停止―など全面停止を求めます。また、県は埋め立て承認の取り消しなど新たな法的・行政的手続きを一切、行わないことも明らかにしました。
さらに、停止期間中に、県が辺野古の臨時制限区域に入り、政府の作業が、県が出した「岩礁破砕許可」に違反していないかどうかを調査することも明らかにしました。政府はこれまで、県の立ち入り要求を拒み続けていました。
日本共産党の渡久地修県議は、「政府は県と対話しろと批判を受け、追い詰められての一歩。戦争法案廃案とあわせ、新基地建設の永久停止に追い込みたい」と語りました。
一歩前進 重要な機会/記者団に翁長知事
沖縄県の翁長雄志知事は、4日に開いた記者会見で、記者団の質問に次のように答えました。―政府との集中協議期間中は、第三者委員会の検証結果報告を受けての対応を中止するとの発言だったが、その期間は、取り消し・撤回の判断は凍結するということか。知事としては、この期間にどう動いていくことを期待しているか。
知事 発表しましたように8月10日から9月9日までを、集中的に協議していく期間となっております。その約1カ月間、(政府・県とも)動かないことになっておりますから、第三者委員会の検証結果報告書を受けての対応というのも行わないということになります。それから、私どもとしては、普天間飛行場を辺野古に移設するということは、不可能であるということを改めて申し上げたい。たとえば、海兵隊の抑止力の問題とか、国際情勢の状況とか、あるいは歴史的な経緯みたいなものも、そういった裏付けの話もしながら、理解をしあえるようなことがあるかないか、これから話し合われることになります。
―合意の評価をお聞きしたい。知事としては、恒久的な中断にしていきたい意向か。
知事 1カ月の中断というものが、今日までの状況を、いい形で一歩前進させるのであれば、これは重要な機会になると思います。この1カ月間が延びるか延びないかですが、まだスタートもしておりませんし、相手のあることでありますので。交渉を決裂しないということは念頭に置きながら、前向きに物事を進めてまいりますが、沖縄県の主張はしっかり主張していきたい。
―普天間の解決に向けて前進したと評価されているのでしょうか。
知事 対話の道が開けて、私たちからすると工事がストップしたということは、前進だと思っております。
―これまで見えないところで政府との協議が行われてきたという印象はぬぐえないが。
知事 密室や不透明であってはいけないと、両副知事と相談をしながら窓口をつくって、いずれにしろ議論はしなければいけませんので、そういった中で進めてきたと思っております。そういう形でやった方が、物事が前に進むのではないかということでは、良かったと思っています。
―安保法案、原発再稼働など重要課題を抱えている中で、政府には、沖縄との対立を回避したいという狙いもあると思うが。
知事 今、政府がどういうふうに考えているか分かりませんけれども、中断する重みというのは大きいと思います。またこのことは当然のことながら、ワシントンDCも無関心ではいられないと思います。
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