主張
「日本の約束草案」
温暖化対策の責任果たせない
安倍晋三政権が17日にようやく決定して国連へ提出した地球温暖化を抑える温室効果ガス削減目標(「日本の約束草案」)に対し、内外の環境団体などから見直しを求める声が相次いでいます。2020年以降の地球温暖化対策の新しい枠組みについての国際協議は、年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に向け大詰めを迎えています。世界第5位の温室効果ガス排出国である日本が、国際的な責任にふさわしい野心的な目標を示すことが求められています。
公平でも野心的でもない
深刻な気候変動や生態系の破壊を引き起こしている地球温暖化を抑制するために、すべての国を対象に20年以降の新たな対策の枠組みをつくるための協議は、欧州連合(EU)やアメリカ、中国などが相次いでそれぞれの目標を国連に提出し、その中身をめぐり各国間での協議が進んでいます。日本は国際会議で立ち遅れを皮肉った「化石賞」が贈られるなど批判を買ってきました。6月の主要国首脳会議(G7)などでようやく目標の原案を示したものの、正式決定し国連に提出したのはつい先日というありさまです。
内外の環境団体が批判しているのは、日本の目標提出が遅すぎたうえ、国際的に見ても低すぎることです。日本が提出した「約束草案」では、日本は温室効果ガスの排出を「30年度に13年度比で26・0%削減」するとしています。基準として持ち出した13年度は東京電力福島原発事故のあと全国で原発が停止し、温室効果ガスの排出が多い石炭など火力発電による電力供給が増えた年です。国際的な基準となっていた1990年度と比較すると18%削減にしかなりません。これまで削減目標を発表しているEUやアメリカにくらべても低く、公平でも野心的でもない目標数字です。
政府が6月に原案を発表したあと、温室効果ガスを大量に排出してきた国として国際的責任を果たせないとか、政府が中期目標として決めている「50年に80%削減」と整合性がないなどの批判が出されていました。そうした声に耳を傾けることもせず、原案通り押し切ったこと自体、大問題です。
温暖化対策の「約束草案」は、30年度の電源構成を原子力は全体の22~20%程度確保する一方、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーは22~24%に抑え、大量に排出する石炭火力は26%程度、LNGは27%程度などとする政府が決めた「長期エネルギー需給見通し」が前提です。石炭火力は福島事故前より高い目標です。こうした計画で、温暖化対策に責任を果たせないことは明らかです。
世界の流れに逆らうもの
地球温暖化が世界的な大問題になる中で、石炭火力など温室効果ガスの排出が多い電源は依存度を下げ、再生可能エネルギーを増やすのが世界の大勢です。原子力も「脱原発」が世界の流れです。
エネルギーの「コスト」などを理由に、再生可能エネルギーへの転換を遅らせ、原発や石炭火力への依存を続ける電力業界や産業界いいなりの姿勢では、温暖化対策は前進しません。安倍政権に「約束草案」とともにエネルギー需給の計画を撤回させ、国際的責任を果たせる、真に野心的な温暖化対策を出させることが重要です。