主張
戦争法案と首相
批判に応える姿勢と正反対だ
憲法も民主主義も破壊する戦争法案を衆院で強行採決した安倍晋三政権が、国民の厳しい批判にさらされ、マスメディアの世論調査でも内閣支持率を軒並み低下させています。こうしたなか、安倍首相が相次いでテレビのインタビューなどに出席しましたが、その中身は「支持率にかかわらず(戦争法案は)やらねばならない」といいはるなど、国民の批判に応える姿勢とは正反対の居直りです。現実離れしたたとえを持ち出して戦争法案の合理化をはかるのも、反省どころか、戦争法案を押し通す本心を見せ付けるものです。
たとえ話で成立狙う
安倍首相が相次いでテレビなどのインタビューに出演したのは、戦争法案を衆院で強行採決したあと、新聞やテレビなどの世論調査で内閣支持率が軒並み急落してからです。内閣支持率が10ポイント近く下落した共同通信の調査(19日付各紙)で、支持37・7%、不支持51・6%と支持と不支持が逆転したのをはじめ、どの新聞、テレビの調査でも、不支持が支持を上回りました。戦争法案への「反対」が「賛成」を圧倒するとともに、衆院での強行採決に対し「問題だ」が68%(「毎日」同日付)、「よくなかった」が69%(「朝日」20日付)など、民主主義を破壊する法案審議の進め方そのものに批判が集まっています。
安倍政権は、国民の評判が悪かった新国立競技場建設については「白紙」に戻し見直すことにしました。ところが戦争法案については、国民の理解が進んでいない状況であることは認めながら、その理由を政権側の「説明不足」に求め、「支持率にかかわりなく、やらなければならない」と、あくまでも成立に突き進む構えです。首相が相次いでテレビのインタビューに出席したのも、先頭に立って国民を“説得”するためです。
新聞やテレビのどの世論調査でも、国民の8割前後が戦争法案について安倍政権は「説明不足」だと答えています。しかしそれは戦争法案がなぜ必要なのか、戦争法案でなぜ安全が守られるのか、国民が納得していないからで、首相が先頭に立って一方的に説明さえすれば納得が得られるようにいうのはまったくの筋違いです。憲法違反の戦争法案の成立を前提に、国民を抑え込もうとすること自体、批判に耳を傾ける姿勢ではありません。
だいたい首相には、国民にまともに説明する態度がありません。番組では首相が模型まで持ち出して、隣の「アメリカ」家の母屋が放火されても「日本」は消火に参加しない、「アメリカ」家の離れが燃え、「日本」家に燃え移ろうとしたときだけ、両家の間の道路で消火に参加する―などと説明しました。荒唐無稽なだけでなく、戦争と火事を比較するたとえ自体間違っています。消火と違い戦争に参加すれば、戦闘を広げ殺し殺されることになります。批判をかわせばいいという本心は明らかです。
独裁政治追い込む好機
安倍政権への批判は、衆院での強行採決とともに一気に高まっています。批判に耳を貸さない独裁政治は、国民に通用しません。
参院での審議が始まりますが、安倍首相が戦争法案成立のため居直れば居直るほど、批判は高まる一方です。安倍・独裁政治を追い詰めてこそ、戦争法案を廃案に追い込むチャンスが広がります。
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