主張

夏の「節電」期間

原発ゼロでも電力賄えている

 夏と冬の電力の需要が増える時期に、政府が企業や家庭に節電を呼びかける節電要請期間が、今年の夏も始まっています。7月から9月までの3カ月間、沖縄電力管内を除く全国で、平日の日中、無理のない範囲で節電を呼びかけるというものです。この夏も、節電の数値目標は設定されていません。東京電力福島原発事故を受け、全国のすべての原発は止まっているのに、それでも電力は賄える見込みだからです。節電の努力はもちろん必要ですが、「原発ゼロ」で電力が賄えている条件を生かして今こそ原発からの撤退に進むべきです。

再稼働ができた原発なし

 安倍晋三政権は原発の再稼働を推進し、電力会社が再稼働を申請した各地の原発について、原子力規制委員会が審査を進めてきました。しかし結局、夏場の電力需要の拡大に再稼働が間に合った原発はひとつもありませんでした。

 原子力規制委はこれまでに九州電力の川内原発1、2号機(鹿児島県)、関西電力の高浜原発3、4号機(福井県)を福島原発事故後作成した新しい基準にもとづく審査に「合格」させ、四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)についても近く「合格」させようとしています。にもかかわらず、もっとも先行している川内原発の1号機でさえ使用前検査が大幅に遅れ、再稼働の時期は遅れています。

 再稼働が安倍政権や電力会社のもくろみどおり進んでいないのは、原子力規制委の審査が原発の安全性を保証するものでないことが明らかになり、再稼働に反対する住民・国民の運動も強まる一方だからです。川内原発の場合も、火山噴火の影響への審査が不十分なことや住民の避難対策がもともと審査の対象外になっていることが大問題になっています。福島原発事故の被害の大きさや、事故が浮き彫りにした原発の危険性を直視すれば、原発は本来再稼働すべきではなく、停止中の原発はそのまま廃止すべきです。再稼働を強行する道理のなさは明らかです。

 原発の再稼働が計画通り進んでいないのに、この夏も電力は賄える見込みです。安倍政権も節約の必要性はいいながら、福島原発事故直後を除けば3年連続で数値目標を見送ったのにも、再稼働の根拠のなさは明らかです。

 安倍政権のこの夏の電力需給見通しによれば、電力需要に対する供給力を示す「予備率」は、7月、8月、9月とも、どの電力会社でも最低限必要な3%を確保できる見込みです。水力や火力のほか、各電力会社間で電力を融通するからです。実際には例年、思ったほど需要が増えなかったなどでさらに「予備率」は大きくなっています。「原発ゼロ」でも電力が賄えるのは明らかです。

再生エネへの転換が急務

 安倍政権や電力会社は原発に固執し、再稼働の方針をあきらめていません。原発が再稼働できず、石油や天然ガスなどに頼れば、コストもかかり、温室効果ガスの排出も増えると脅しています。結局はもうけのためで、国民の安全などは二の次、三の次です。

 原発を再稼働しなくても太陽光や風力など再生可能エネルギーに転換すれば温室効果ガスも減らせます。再生エネ利用が進めばコストも安くなります。「原発ゼロ」で電力が賄えているいまこそ、思い切った転換を実行する好機です。