戦争法案を審議中の衆院安保法制特別委員会の総審議時間は18日時点で43時間43分。与党側が当初想定していた、24日の今国会会期末までに80時間を確保しての採決・衆院通過というシナリオは大幅に狂いはじめています。
15日までの審議で、閣僚の答弁などが原因による審議中断は計49回にのぼり、1日の審議で17回止まった日もあります。約50分に1回、審議が中断している計算です。
特別委員会で野党が政府に要求している統一見解や関連資料は合計30件にのぼります。しかし、政府は18日時点でわずか7件しか提出に応じていません。これ自体、法案審議の行き詰まりを示すものです。
政府は審議でも、集団的自衛権をどんな事態で行使するかなどの核心問題について、抽象的な説明や政策論に終始していますが、審議の前提となる資料提出にもまともに応じていません。
なぜこんな事態になっているのか―。
戦争と武力行使を放棄した憲法9条の下で、米国のあらゆる戦争に参加を可能にするという法案が抱える根本的矛盾があらわになり、「法案の憲法的根拠が土台から崩壊」(日本共産党の志位和夫委員長)しているからです。
志位氏の17日の党首討論での追及で、「武力行使と一体化しない後方支援」だから合憲だとする政府の主張が、国際法上も通用しないことが明らかになりました。
国民は見透かしており、世論調査では「読売」(8日)で戦争法案の今国会成立に「反対」が59%にのぼり、先月比で11ポイントも急上昇。時事通信(12日)でも「廃案」12%、「慎重審議」68%で、今国会成立に否定的な声が8割を超えています。
憲法無視の“本音”政府・与党に焦り
5月27日から始まった衆院安保法制特別委員会の審議では、世論の理解が全く広がらない政府・与党の焦りをうかがわせる異例の事態が相次いでいます。翌28日の審議では、野党議員の質問中にいら立った首相が「早く質問しろよ」と前代未聞のやじを飛ばし、「おわび申し上げる」(6月1日)と謝罪に追い込まれました。
審議が頻繁に中断するのも、担当閣僚が法案の危険性をごまかして抽象的な説明を繰り返したり、答弁不能に陥って同じ答弁しか返せないためです。
6月4日の衆院憲法審査会では、参考人の憲法学者3氏全員が法案に「違憲」を宣告し、審議の潮目は一変しました。
翌5日に法案の合憲性を追及された中谷元・防衛相は「現在の憲法をいかにこの法案に適応させていけばいいかという議論を踏まえ閣議決定した」と憲法無視の“本音”をポロリ。立憲主義を全く理解しない「憲政史上最悪」の答弁との非難が一斉に広がり、中谷氏は10日の委員会で答弁撤回に追い込まれました。
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