日本を「海外で武力行使する国」にする戦争法案が26日の衆院本会議で審議入りしました。審議の序盤から、「日本が殺し、殺される国になる」という戦争法案の危険な本質が浮き彫りになり、国民の懸念が深まっています。これをかわすため、安倍晋三首相は自衛隊員の「リスク」を意図的に語らず、法案にもない「安全」措置を掲げるなど、「安全」偽装工作とも言える答弁を持ち出していますが、次々と崩れています。

●戦地派兵

 「現在、戦闘が行われていないだけでなく、自衛隊が活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所を実施区域にする」(26日、衆院本会議)

 戦争法案は、従来の海外派兵法にあった「非戦闘地域」(活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがない場所)という活動区域の制約を外しましたが、この首相答弁は、あたかも「非戦闘地域」を復活させるような印象です。

 しかし、戦争法案は実施区域について、「円滑かつ安全に実施できる…区域」としか定めていません。日本共産党の志位和夫委員長から、「…見込まれる場所」など、条文上のどこにもないことを指摘されると、首相は一言も反論できませんでした。

●武器使用

 「安全確保業務における武器使用で、相手に危害を加える射撃が認められるのは、正当防衛・緊急避難に限られる」(同)

 現行の海外派兵法で認められる武器使用は「自己防護」に限られますが、戦争法案に盛り込まれたPKO(国連平和維持活動)法改定では、任務遂行に伴う「妨害排除」のための武器使用が加わっています。

 首相答弁は武器使用が「自己防護」に“限定”しているような印象を与えますが、首相が言及しているのは「危害射撃」だけです。相手の足元を撃つ「威嚇射撃」などは排除していません。

●海外派兵

 「海外派兵は一般に許されない。例外的な措置がホルムズ海峡での機雷除去だ」(27日、安保法制特別委)

 この首相答弁は、「武力行使の新3要件が満たされれば、他国の領土・領空・領海でも武力行使できるのか」という質問に、中谷元・防衛相が「そのとおりだ」(28日)と答えたことで根拠が崩れました。戦争法案は、他国に対する武力攻撃で日本が武力行使するという集団的自衛権の行使を認めているのですから、首相答弁はそもそも成り立ちません。

●戦死リスク

 「今までも自衛隊員の死傷者は出ていなかったというのは間違いだ」(28日、特別委)

 この答弁は、災害派遣などに伴う殉職者と、海外派兵拡大に伴う死傷者発生のリスクを意図的に混同させています。自衛隊の災害派遣に伴う殉職リスクは今後も存在します。しかし、戦後一度も出ていない「戦死者」が出るのではという質問に対し、首相は一度も正面から答えていません。