主張

医療保険改悪法案

「国民皆保険」に大穴開けるな

 参院厚生労働委員会で審議中の医療保険制度改悪法案について、安倍晋三内閣と与党が採決の動きを強めています。約3500万人が加入する国民健康保険(国保)制度の大改変などを柱にした法案は、国民の健康と暮らしに大きな影響を与えるものです。国会審議を通じて、新たな負担増の深刻さ、安全性が不確かな医療の拡大の危険などが浮き彫りになっています。いつでも、どこでも、だれもが安心して医療にかかれる「国民皆保険」を揺るがす法案の危険はいよいよ明らかです。このまま採決を強行することは許されません。

改革どころか矛盾深める

 改悪法案は、「制度発足以来の大改革」などとして国保の財政運営を市町村から都道府県に移すことを“目玉”にしていますが、とても「改革」とはいえない中身です。

 それどころか「都道府県化」は、市町村が独自に決めていた保険料(税)を「平準化」させることなどを通じて、住民に保険料の負担増や保険料徴収の強化をもたらす仕組みになっています。都道府県に「医療費抑制」を強引にすすめる計画をつくらせ“司令塔”の役割まで担わせようとしています。

 高すぎる国保料が払えず滞納世帯が続出している「国保の構造的危機」を解決するには、「都道府県化」は逆行そのものです。全国知事会は、保険料引き下げのため「1兆円の国費投入」も要望していました。日本共産党の小池晃参院議員は、これを実現すれば国保加入者1人当たり3万円の保険料軽減ができることを質問で明らかにしました。「大改革」というなら、そういう決断をして、住民の切実な願いにこそこたえるべきです。

 改悪案に盛り込んだ、入院給食費の患者負担(1食200円増、月1万8000円増)は、受診抑制を広げる危険があります。いまも入院で仕事ができなくなり収入が減ることを案じ、必要な入院にも二の足を踏む患者が少なくありません。給食費負担増が深刻な事態に拍車をかけるのは必至です。

 在宅治療ができないから入院し、治療の一環として病院の栄養管理のもとで出されている給食は、家での食事と全く違います。在宅との「公平のため」といって値上げすること自体、筋違いです。

 紹介状がなく大病院を受診した際に5000円から1万円を上乗せして患者に定額負担を強いる改悪も、きわめて乱暴なものです。

 “大病院に患者が集中しないように”という改悪の理由は成り立ちません。すでに一部の病院で追加負担を実施していますが、全国医学部長病院長会議の調査では患者の減少につながらないことが判明しています。いくつも病院を回らないと診断がつかない患者が少なくないなかで、定額の追加負担は、病気の早期発見・治療を妨げる結果しかもたらしません。

「命の格差拡大」許さず

 安全性の担保のない先進医療でも患者が「要望」すれば公的医療との併用を認める「患者申し出療養」の新設には「不確かな医療を広げる」「混合診療の拡大につながる」と不安と批判が医療提供者と患者の双方から上がっています。

 お金がないとまともな治療が受けられない「健康と命の格差」をますます広げる医療保険制度改悪法案の強行は、国民に不利益しかもたらしません。徹底審議で廃案に追い込むことが必要です。