主張
防衛省設置法改定
戦争と縁切れぬ国にするのか
防衛装備庁の新設や「文官統制」の廃止を盛り込んだ防衛省設置法改定案が14日にも衆院安全保障委員会で採決されようとしています。防衛装備庁の設置は、米国のように軍事組織と兵器産業が結合・癒着し、政治に絶大な影響力を持つ軍産複合体の形成につながる危険も指摘されています。「文官統制」の廃止は、政治が軍事に優先する文民統制(シビリアンコントロール)の原則を掘り崩すものです。安倍晋三政権が14日の閣議決定を狙う「戦争立法」をはじめ「海外で戦争する国」づくりの一環にほかならず、日本の国の在り方に関わる重大問題です。
先にあるのは軍産複合体
防衛装備庁は防衛省の外局として置かれ、(1)装備品(武器)等の研究開発・調達等の適正かつ効率的な遂行(2)防衛生産・技術基盤の強化(3)国際的な防衛装備・技術協力等の推進―が任務とされています。武器の調達を合理化するため武器の開発・生産・購入といった権限を防衛装備庁に一元化するとともに、兵器産業基盤の育成・強化のため同庁が獲得した予算を効率よく民間企業などに配分できるようにするのが狙いです。
専門家は、日本の産業は急速に軍事化するとし、「この先に見えるのは軍産複合体」であり、米国の例で明らかなように「それは戦争と永遠に縁が切れない社会を意味する」と強く警鐘を鳴らしています(西川純子獨協大学名誉教授、4月23日、衆院安全保障委員会参考人質疑)。
防衛装備庁が「国際的な防衛装備・技術協力」として、昨年4月に全面解禁された武器輸出の促進を任務にすることも重大です。政府を挙げて武器輸出を積極的に展開しようとするものであり、国際紛争を解決する手段として武力による威嚇、武力の行使を放棄した憲法9条を持つ国の政府として許されるはずがありません。
改定案は、防衛省の内部部局(内局)の背広組(文官)が自衛隊の制服組(自衛官)をコントロールする「文官統制」の廃止も盛り込んでいます。具体的には、防衛相が制服組トップの統合幕僚長や陸海空各幕僚長に行う指示や承認、陸海空自衛隊や統合幕僚監部の監督を内局の官房長や局長が補佐するという規定をなくします。自衛隊の運用を担当する内局の運用企画局も廃止し、部隊運用業務を統合幕僚監部に一元化します。部隊運用に関わる制服組の情報は内局を通さないで防衛相に上げることができるようになり、防衛相も直接指示が出せるようになります。
中谷元・防衛相は自衛隊の海外活動の拡大などの実績を踏まえ、部隊運用の迅速性を高めるためだと説明していますが、内局のチェック機能は弱まり、制服組に都合のいい情報が優先的に取り上げられ、制服組が独断で行動することを許す危険があります。
速やかな海外派兵が狙い
歴代政府は、自衛隊の違憲性をごまかすため自衛のための必要最小限度の実力組織であれば憲法に違反しないとし、自衛隊への文民統制の重要な要素として「文官統制」を挙げてきました。今回の改定案は、自衛隊の速やかな海外派兵などのため、その邪魔になりかねない「文官統制」さえ廃止しようとするものです。採決を強行することは許されません。徹底審議で廃案にするしかありません。
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