主張

自民党の改憲策動

国民愚ろうの「お試し」許さず

 昨年末の総選挙後初の本格的な議論が行われた7日の衆院憲法審査会で、自民党の船田元・憲法改正推進本部長が「緊急事態条項」「環境権など新しい人権」「財政規律条項」の三つを優先して議論することを改めて要求、段階的に改憲案づくりを進める意向を重ねて鮮明にしました。国民が望んでもいないのに、「9条改憲」の本音を隠して国民をならすために、段階的に改憲を進めるなどというのは、国民を愚ろうするものです。憲法を擁護・尊重すべき国会議員が、国会を党略的な改憲案づくりの場にすることは許されません。

「改憲」自体国民望まず

 「緊急事態条項」などの改憲案づくりを優先させ、まずは「お試し改憲」で国民をならし、本命となる「9条改憲」に道を開いていくことは、自民党がこのところ繰り返し持ち出すようになった「改憲」戦略です。安倍晋三政権の復活後、本格的な改憲の前に改憲案の発議など改憲の手続きを緩和する「96条改定」を優先させることを持ち出し、立憲主義を破壊する「裏口入学」だと批判されたことがあります。まず抵抗の少ないとみられるところから手をつけようという「お試し改憲」も、国民を無理やり改憲に押しやる卑劣な憲法破壊の策動です。

 今年の憲法記念日を前後して多くのマスメディアが憲法についての世論調査を行いましたが、鮮明になったのは、国民が9条はもちろん、憲法そのものについて改定を求めていないことです。「朝日」の調査ではかつては改憲に「賛成」が「反対」を上回っていたのが昨年から2年連続で逆転し、今回は「変える必要はない」が48%です。NHKの調査でもかつては多かった改憲の「必要がある」が「必要はない」とほぼ同じです。「日経」では2004年以降初めて「現在のままでよい」が改憲を上回りました。

 憲法9条についてはいずれも、「変えないほうがよい」が63%(「朝日」)、「改正すべきだと思わない」が55%(「毎日」)などと圧倒的です。安倍政権のもとで憲法破壊の動きが強まるなか、国民のなかに改憲への批判と警戒が広がっていることは明らかです。

 「緊急事態条項」などから議論を始めるといっても、自民党が日本を「海外で戦争する国」に変えてしまう「9条改憲」をあきらめていないことは、同党が「9条改憲」などを「特に重要な項目」と位置づけていることから明白です。自民党の船田氏が審査会で「緊急事態条項」についてふれた中身も、「大規模自然災害時には国会議員の任期を延長する」などというもので、衆院の選挙中でも緊急時には参院の緊急集会を開けるなどの規定がある現行憲法を、変えなければならないものではありません。

憲法破壊の企て許さず

 安倍政権は、集団的自衛権行使についてのこれまでの憲法解釈を踏みにじり、アメリカが始めるどんな戦争にも自衛隊の参加を可能にし、「海外で戦争する国」になる「戦争立法」を、来週にも閣議決定しようとしています。

 いま重要なのは、憲法を破壊する解釈改憲であれ、条文そのものを変えてしまう明文改憲であれ、憲法破壊を許さない声を広げることです。「戦争立法」に反対し、「9条壊すな」の声を、津々浦々で強めようではありませんか。