大阪市の橋下徹市長は、大阪市を解体・消滅させて五つの特別区に再編する「大阪都」構想の特別区設置協定書について賛否を問う住民投票を5月17日に実施します。この間、大阪市は、4月14日から26日までの13日間にわたり毎日3回、合計39回の住民説明会を開催。橋下市長もすべての会場で説明に乗り出しただけでなく、住民の質問に答えました。しかし、そこからは「都」構想の問題点やあらたな疑問も浮かび上がりました。

住民サービスの向上とは無関係

 冒頭、市の大都市局が「都」構想について説明しますが、そこでまず強調されるのは、“都構想は住民サービスと無関係”ということです。

 「特別区設置協定書の内容は、『住民サービスをこのように充実します』というような内容を記載しているものではない」

 大阪維新の会はいま「住民サービスは今より向上します」(新聞折り込みチラシ)などとしていますが、これが市民をたぶらかすデマ宣伝であることを物語っています。

「二重行政」論の破たんは明らか

 橋下氏らは、大阪市を消滅させる「理由」を、「大阪府と市の二重行政」があるからだなどとしています。その例として挙げられているのが、府・市の病院、大学や中小企業への融資です。これらの課題は、各自治体がそれぞれ独自に大いにとりくむべきことで、重なっていてもまったく問題ありません。

 ところが、橋下市長が決定した市立住吉病院の廃止については、「大阪都構想とまったく関係ありません」「市立病院と府立病院を一緒にして新しい病院をつくる」(23日、住之江区で橋下市長)と明言しています。一方では「二重行政は都構想でなければ解決しない」と主張しながら、他方では二重行政の代表としてあげる市立病院の廃止は都構想と無縁だと主張する。時と場所でいうことがくるくる変わっています。

東京都の発展は合体したから?

 橋下市長がさかんに強調するのが、「東京が発展したのは府と市を合体したから」「都民はみんな区でよかったと思っている」という主張。ところが、東京の府と市が合体して「東京都」になったのは、アジア太平洋への侵略を本格化させるために強力な首都行政の一元化が不可欠だったからです。そのため、国主導で有無を言わせずに強行されました。

 その東京都では、23区の区長で大阪都構想を「評価する」人は一人もいません。都構想によって「迅速な政策実行」や「産業活性化」につながるかどうかについても、ほとんどが「困難」と回答しています(「毎日」2010年10月19日付)。

270万市民にとり最悪デメリット

 説明会では「住民投票の賛否は決めかねている」という住民が、「市長は都構想のいい話ばかりしたが、デメリットはないのか」と質問。橋下市長は、「デメリットがないように作り上げたのが、この制度だ」などと答えました(23日、住之江区)。

 一方で、都構想のための初期費用が600億円もかかることについては、「評価の仕方の問題」などと、考えようによってメリットであるかのようにのべています。

 しかし、大阪市が政令指定都市でなくなれば、都道府県並みの権限や財源が失われ、国と直接交渉できる地位も失われます。それが、270万大阪市民にとって、最大・最悪のデメリットであることにはいっさい口をぬぐったままです。