主張

医療保険改悪法案

「命の格差」拡大は許されない

 国民に医療費負担増などを強いる、安倍晋三政権提出の医療制度改悪法案の審議が、衆院ではじまりました。約3500万人が加入する国民健康保険(国保)制度を大きく変えることや、高齢者にも働く世代にも新たな負担を求めるさまざまな仕組みが盛り込まれています。国民がいつでもどこでも安心して医療を受けられる「国民皆保険」の原則を大本から揺るがす重大な内容です。国民の暮らしと健康、命までも脅かす改悪法案を強行すべきではありません。

国保発足以来の大改変

 改悪法案の柱の一つは国保制度の大改変です。国保の財政運営を市町村から都道府県に移管するものです(2018年度実施)。1961年発足の国保の歴史のなかでかつてない大規模な変更です。

 改変は住民が払う保険料などに深刻な影響を与えます。高すぎる国保料は全国どこの自治体でも問題になっていますが、粘り強い住民運動や日本共産党地方議員の論戦で、市町村が独自に財政支援をおこない、保険料を軽減する例が各地に生まれています。市町村が保険料を独自に決める現在の仕組みだからこそ可能なのです。

 ところが改悪案では仕組みが変わります。保険料自体は引き続き市町村が決めますが、保険料決定への都道府県の関与が強まり、「標準保険料率」という目安を市町村に示します。市町村で保険料の違いが出ないためなどとして、財政支援をやめさせたり、保険料を引き上げさせたりする都道府県の指導が強まる危険があります。

 都道府県に医療費と病床数の削減計画をつくらせ、実行させる権限も与えています。都道府県を、医療費削減のための“国の下請け機関”に変質させる改悪は、住民の願いに逆行するものです。

 国保改革で必要なのは、360万を超す滞納世帯を生む高い国保料の引き下げであり、滞納世帯にたいし容赦なく行われる保険証の取り上げなどをやめることです。

 保険料を払えず保険証を失い病院にいけない。手遅れで命まで失う―。こんな悲劇を引き起こさないようにすることが政治の責任です。国保を「社会保障及び国民保健の向上に寄与」(国保法1条)する制度にふさわしいものに改善・充実させることが求められます。

 改悪案で導入を狙う「患者申出療養制度」は、大企業のもうけのために「医療の規制」を撤廃することをたくらむ安倍政権の「成長戦略」の“目玉”の一つです。

 患者の「申し出」を口実に、安全性・有効性が不確かな医療が出回り、医療事故の責任を患者に負わす危険も指摘されています。新薬や新たな治療が高額のまま留め置かれ、お金のある人しか最新医療にかかれないおそれもあり、難病患者団体は反対の声を上げています。「命の格差」を広げる仕組みをつくることは許されません。

負担増にストップの声を

 法案に盛り込まれた65歳以下の入院時の食事代引き上げは患者に大打撃です。紹介状なしで大病院を受診した際の定額負担の上乗せ義務化は受診制限につながります。75歳以上の後期高齢者医療制度の保険料軽減措置廃止は865万人の高齢者を直撃します。

 安倍政権の社会保障破壊・負担増路線にたいする住民の怒りの審判を、いっせい地方選の後半戦でも下すことが求められます。