日本共産党の穀田恵二衆院議員が8日、「衆議院選挙制度に関する調査会」で行った意見陳述(要旨)は以下の通りです。

1 現行選挙制度の問題点と改革の方向   

(1)現行の選挙制度の最大の問題点、得票と獲得議席の乖離

 現行の選挙制度の最大の問題は、小選挙区比例代表並立制によって、民意の反映がゆがめられ、第1党が4割台の得票で7~8割もの議席を独占することです。

 この制度の下で実施された6回の総選挙の結果は、その根本的欠陥を浮き彫りにしています。

 2005年総選挙では自民党296議席、09年は民主党308議席、12年は自民党294議席、14年は自民党が291議席と、第1党が圧倒的な多数議席を獲得しました。

 小選挙区における第1党の得票率と議席獲得率をみると、いずれの選挙も小選挙区での得票率は4割台にもかかわらず、7~8割もの議席を占めています。

多数の死票を生みだす制度

 得票率と獲得議席に著しい乖離(かいり)を生み出し、議席に反映しない投票、「死票」は、各小選挙区投票の過半数にのぼっています。民意をゆがめて、比較第1党の「虚構の多数」をつくり出す一方で、少数政党は、得票率にみあった議席配分を得られず、獲得議席を大幅に切り縮められました。

 民意の反映を大きくゆがめる小選挙区制の害悪は明白です。

(2)選挙制度改革の方向 選挙制度はどうあるべきか

 選挙制度は、民主主義の根幹であり、国民・有権者の参政権の問題です。選挙制度を考える基本原則は、国民の多様な民意を鏡にうつすように、できる限り正確に反映することでなければなりません。

〈選挙制度改革についての日本共産党の提案〉

 衆議院選挙制度について、小選挙区比例代表並立制を廃止し、民意を正確に反映する比例代表制への抜本改革を行います。現行の総定数を維持し、全国11ブロックを基礎とした比例代表制にすることを提案します。

 これにより、「民意をゆがめる」という小選挙区制の最大の弊害をとりのぞき、1票の格差も解消します。

改革の進め方

 選挙制度の改革は、国会を構成するすべての政党・会派が参加して、議論をつくすべきです。一部の党が談合し、多数の力で押し付けるやり方は、民主主義の否定につながり、許されるものではありません。

各党協議の到達点

 2011年10月から国会を構成する全政党の参加で、衆議院選挙制度に関する各党協議がおこなわれてきました。この協議の中で、自民党も民主党も含め、現行制度は「民意とゆがみが出る」「小選挙区による過度な民意の集約」に問題があるとの認識で一致し、13年6月25日に、全党が合意して「確認事項」を取りまとめました。

 「確認事項」は、「よりよい選挙制度を構築する観点から、現行並立制の功罪を広く評価・検証し、抜本的な見直しについて、各党間の協議を再開し、結論を得るものとする」としています。この全党の唯一の合意にたって、改革の協議をすすめるべきでした。

 ところが、13年の参院選後、日本共産党は、全党が合意した「検証作業」の実行を求めましたが、民主党など一部の党は全党の協議を打ち切り、第三者機関として「選挙制度調査会」が設置されました。

選挙制度調査会に求められていること

 こうした経過に立って、調査会は、諮問事項の1番目に書かれている「現行制度を含めた選挙制度の評価(長短所、理想論と実現性)」の検証を行うべきです。

 ところが、この調査会が最初の調査議題としたのは「小選挙区の一票の較差(こうさ)」です。小選挙区制そのものが問題となっているときに、小選挙区間の格差問題から議論することは、小選挙区制の維持を前提としたものと言わざるを得ません。

2 議員定数はどうあるべきか

(1)「身を切る改革」は消費税増税押し付けの口実

 「身を切る改革」と称して、「定数削減」が議論されています。今回の議員定数の削減は、民主党野田政権が「国民の皆さんに消費税増税をお願いする以上、政治家も身を切る改革が必要だ」といって、消費税増税を国民に押し付けることと一体でもちだし、「比例定数80削減」を喧伝(けんでん)したことを契機としたものです。

 主権者の民意を反映するための国会議員を削減して「国民の声を切りすて」たうえ、消費税増税という「負担」を国民に押し付けようというのが「身を切る改革」の正体です。消費税増税の是非と定数削減はまったく別の問題です。

 ましてや、投票価値の不平等や民意の反映が問題になっているときにこれを持ち出すのは、きわめて不当であるとともに筋違いです。にもかかわらず、定数削減が必然の課題のように議論され、それをマスメディアがあおっていることが問題です。

(2)議員定数とはどうあるべきか

 議員定数のあり方は、国民の代表をどう選ぶかという選挙制度の根幹をなす問題です。

 日本国憲法は、国民が主権者であり、「日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」すると前文の冒頭に明記しています。国民の代表で構成される国会の役割でもっとも大事なことは、政府を監視し暴走させないようにすることです。定数削減によって、国会の政府監視機能が低下することは明らかです。

 日本の国会議員の総定数は、80年代には、衆院512、参院252でした。ところが、「政治改革」以来の20年の間に衆参ともに定数が削減され、現在では、衆院475、参院242議席となっています。

 わが国の男子普通選挙法1925年制定時には「人口12万人で1議員を配当」したことからみても、議会政治史上もっとも少ない水準となります。

 国会議員1議席が何人の国民を代表しているかをみると、現行の衆院定数(475)は、人口約27万人に1議席の割合です。イギリス、ドイツなど諸外国(下院)は10万人に1議席の水準であり、国際的にみても、日本は議員が少ない国となっています。

 これ以上「国民の代表」を削減する定数削減を行うことに合理的根拠は存在しません。

3 「1票の格差」について

 日本共産党は、20年前、小選挙区制を中心とする選挙制度が提案されたとき、この制度は、民意の公正な議席への反映をゆがめ、比較第1党に虚構の多数を与える根本的問題があるとして反対しました。同時に小選挙区の区割り規定が2倍以上の格差を容認していることは、投票価値の平等に反する違憲立法だと批判しました。

 小選挙区制のもとでは、「1票の格差」の是正のためには、市町村の行政単位や地域社会を分断する異常な線引きが避けられず、有権者は選挙区の不自然な変更を強いられることになります。小選挙区制がもともと、投票権の平等という憲法の原則とは両立できない制度であることは、その導入以来の歴史が実証しています。

 出発点から根本に問題がある制度を強行し、維持し続けてきた各党の責任が厳しく問われています。いまこそ、小選挙区制を廃止し、民意を反映する選挙制度へ抜本的に改革すべきです。

4 いまこそ20年前の「政治改革」を検証すべき

 今から約20年前のいわゆる「政治改革」によって、小選挙区比例代表並立制の導入、企業・団体献金の温存と政党助成制度の創設が行われました。

 この「政治改革」は、国民が求めた金権腐敗政治の一掃にならなかったばかりか、民意の反映をゆがめ、「政党の堕落」と「政治家の劣化」をまねきました。

 いまこそ、「政治改革」から20年を検証し、制度そのものの根本的な見直しが求められています。