県民は基地提供したことない
沖縄県の翁長雄志知事と菅義偉官房長官は5日、同県名護市辺野古の新基地建設をめぐって那覇市内のホテルで会談しました。昨年11月の県知事選以来、両者の会談は初めて。安倍政権は新基地建設阻止を掲げる翁長知事との面談を拒否し続けてきましたが、あまりの冷たさと民主主義に反する強権ぶりに批判の声が高まり、会談に応じざるをえなくなったものです。
会談は約1時間行われ、冒頭の30分が報道陣に公開されました。菅長官は、辺野古の新基地建設は、市街地の中心部にある普天間基地(宜野湾市)の「危険性除去」のための「唯一の解決策」であるとの立場をあらためて説明しました。
これについて翁長知事は、「沖縄県民は今日まで、自ら基地を提供したことはない。沖縄戦後、強制接収されたものだ」と指摘。「自ら奪って県民に苦しみを与えておいて、普天間基地の危険性除去のために沖縄が負担しろ、(辺野古以外に)おまえたち代替案は持っているのかという話をすること自体、政治の堕落だ」と厳しく批判しました。
その上で、基地あるがゆえの沖縄県の苦難の歴史にふれ、「辺野古の新基地は絶対に建設することができないという確信を持っている」と断言しました。
また、沖縄の民意について菅長官が「基地賛成も反対もある」などとゆがめたことに対して、翁長知事は「昨年の知事選での争点はただ一つ、仲井真弘多前知事による辺野古の埋め立て承認の是非だけだった。私が10万票差で当選したのは、もろもろの政策によるものではない」と反論しました。
さらに、菅長官が辺野古の埋め立て工事について「粛々と進める」と繰り返していることについて、「上から目線だ」「粛々という言葉を使えば使うほど、県民の心が離れて、怒りが増幅していくでしょう」と述べました。
翁長知事は政府との対話継続を求め、安倍晋三首相との面会を要請しました。菅長官は会談で明言を避けましたが、記者団に対し「沖縄の考え方を聞く中で進めたい」と述べ、拒否はしませんでした。
新基地押しつけは政治の堕落
菅長官との会談 翁長・沖縄県知事の発言
5日に那覇市内で行われた沖縄県の翁長雄志知事と菅義偉官房長官との会談のうち、知事の冒頭発言(要旨)を紹介します。
基地負担
官房長官からもお話がありましたが、沖縄は全国の面積の0・6%に74%の米軍専用施設がおかれ、日本の安全保障を支えてきた自負、無念さがあります。昨年の暮れ、今年の正月、長官はどんなに多忙だったか分かりませんが、こういった形でお話しさせていただきたかった。
私は日米安保体制の重要性は十二分に理解していますが、たった1県の沖縄に多くの米軍基地を負担させて日本の安全を守るといっても、他国から見たら、その覚悟はどうなのだろうかと思います。
オスプレイも本土で訓練するという話がありましたが、基地を本土に移すという話がないので、いずれ訓練も沖縄に戻ってくるのではないか。
基地問題の原点
私は、沖縄県が今日まで自ら基地を提供したことはないのだと強調したい。普天間基地も、それ以外の基地も、全部戦争がおわって、県民を収容所に入れて、そこにいないうちに、あるいはいるところでは「銃剣とブルドーザー」で土地を奪って基地に変わったのです。すべて強制接収されたわけです。
自ら奪って県民に苦しみを与えておいて、そして普天間基地は世界一危険だから、その危険性除去のために沖縄が負担しろ、おまえたち代替案は持っているのかと。日本の安全保障はどう考えているのか、こういった話をすること自体、日本の政治の堕落ではないのか。日本の国の品格から見ても、世界から見ても、おかしいのではないか。
一昨年、サンフランシスコ講和条約の発効でお祝いの式典がありましたが、沖縄にとっては本土から切り離された悲しい日です。万歳三唱を聞いていると、本当に沖縄に対する思いがないのではないかな、と率直に思います。
沖縄は27年間、日本の独立とひきかえに米国の軍政下に差し出されて、その間、日本は高度経済成長を謳歌(おうか)しました。官房長官と私は同じ法政大学ですが、私は22歳まで、パスポートを持って、ドルで送金を受けていました。
安倍政権の姿勢
官房長官が辺野古の埋め立てに関して「粛々」という言葉を何回も使われますが、米軍の軍政下でキャラウェイ高等弁務官が「沖縄の自治は神話だ」と言いました。官房長官から「粛々」という言葉が何度も出てくると、キャラウェイ高等弁務官の姿と重なるような感じがします。
そして、プライス勧告です。米国は強制接収された土地を、さらに強制買い上げをしようとしました。とても貧しい時期でしたから、県民はのどから手が出るほどお金がほしかったと思いますが、みんなで力をあわせてプライス勧告を阻止しました。ですから、今、私たちの手の中に基地が残っているのです。
「粛々」という言葉には脅かされない。上から目線で「粛々」という言葉を使えば使うほど、県民の心が離れて、怒りは増幅していくでしょう。
辺野古新基地
私は、辺野古の新基地は絶対に建設することができないという確信を持っています。県民のパワーは、私の誇りと自信、祖先に対する思い、それから将来の子や孫に対する思いが全部重なって、私たち一人ひとりの生きざまになっています。こういう形で「粛々」と進められるのなら、建設するのは絶対に不可能になると思います。
ラムズフェルド米国防長官(当時)が「普天間は世界一危険」だと発言し、官房長官も国民や県民を洗脳するかのように、「普天間の危険性除去」のために「辺野古が唯一の解決策」だと言っていますが、では、辺野古新基地ができなければ、普天間は固定化されるのか、官房長官にお聞きしたい。
基地負担の軽減
普天間が返還されて辺野古新基地の面積が3分の1になるという話や、嘉手納基地以南の基地が相当数返されるといいますが、一昨年、当時の小野寺防衛相に聞いたら、沖縄の米軍専用基地が置かれている割合は現在の73・8%から、73・1%にしか変わらないというのです。なぜなら、那覇軍港もキャンプ・キンザーも県内移設だからです。しかも、これら基地は、2025年度や28年度までに返還するとありますが、「又はその後」という条件がついています。これがつけば、返還まで50年ぐらい軽くかかるのではないか。
沖縄の民意
官房長官から「沖縄の民意にはいろいろある」との発言がありました。しかし、昨年の名護市長選挙、知事選挙、総選挙の争点はただ一つ。仲井真前知事による辺野古の埋め立て承認の是非でした。それ以外、私と前知事に政策的な違いはありませんでした。私が10万票差で当選したのは、もろもろの政策によるものではないのです。
「抑止力」
沖縄に基地があると、最近はミサイルが発達しているので、1発、2発で危なくなります。こうしたことを考えると、私は米軍も、もう少し遠いところにいきたがっているのに、日本の方が「抑止力」ということで引き止めているのではないか。他方、沖縄の基地はアジアや中東をみすえるところまで使われるのではないかと思いますが、(抑止力に関する)根本的な説明がないと、辺野古新基地は難しい。
首相との面会要請
今日は官房長官にお話しさせていただきましたが、安倍総理との面談の手配もお願いしたいと思います。
(菅長官は)基地負担軽減相でありますので、辺野古新基地の建設を中止しながら、しっかりと基地問題を解決していただきたいと思っております。
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