主張

「戦争立法」の推進

初の戦死者を出していいのか

 集団的自衛権行使容認などを柱にした「閣議決定」に基づき「戦争立法」の「具体的な方向性」で自民・公明の与党が合意したのを受け、安倍晋三内閣が、法案化作業を加速しています。「戦争立法」が成立すれば自衛隊創設以来初の戦死者が出るばかりか、他国の人々を殺傷する危険がいよいよ現実化します。憲法をじゅうりんし、自衛隊員を「殺し、殺される」戦地に送り出そうとしている安倍・自公政権の責任は極めて重大です。

「危険性は劇的に変わる」

 「戦争立法」の狙いの一つは、米国が乗り出す戦争への軍事支援を歯止めなく拡大することです(周辺事態法改定、海外派兵恒久法など)。このうち海外派兵恒久法は、自衛隊をいつでもどこでも派兵できるようにする新法です。

 これまで米国の戦争を実際に支援した法律には、▽米国のアフガニスタン報復戦争(2001年)で補給支援のため自衛隊をインド洋に派兵したテロ特措法▽米国のイラク侵略戦争(03年)を受け、「人道復興支援」や空輸支援のため自衛隊をイラクに派兵したイラク特措法―があります。

 両特措法は、自衛隊の活動地域を(1)現に戦闘行為が行われておらず(2)活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域(非戦闘地域)に限っていました。これに対し新たに作る海外派兵恒久法は、(2)の要件を撤廃し、「現に戦闘行為を行っている現場」(戦闘現場)以外ならどこでも活動できるようにします。

 活動場所が「戦闘現場」になれば活動を休止するとしていますが、これは「戦闘現場」になり得る場所でも活動するということです。しかも、政府資料では、捜索・救助の場合、「戦闘現場」になっても「継続が許容される場合がある」としています。自衛隊が敵対勢力から攻撃されて応戦し、戦闘に発展する危険は避けられません。

 自衛隊のイラク派兵では、「非戦闘地域」にもかかわらず、サマワの陸自宿営地や空自輸送機が乗り入れたバグダッド空港は攻撃にさらされました。恒久法では、「戦闘現場」でなければ米軍の戦闘部隊が展開する前線まで自衛隊が行くことができるようになります。

 当時、首相官邸で安全保障・危機管理担当の内閣官房副長官補だった柳沢協二氏は、恒久法では「危険性の質がイラク派遣とは劇的に変わる」と述べ、「イラクでは何とか戦死者を出さずに済みましたが、あれ以上のことをやれば必ず戦死者が出る」と強調しています。(「朝日」21日付)

 アフガンでは、米国の要求を受け、日本政府が陸自ヘリ部隊の地上派遣を検討したものの断念したことが明らかになっています。恒久法ができれば、武装勢力の攻撃に遭う危険度の高い地域への派兵も可能です。加えて安倍政権は、PKO(国連平和維持活動)法を改定し、イラクやアフガンでできなかった「任務遂行のための武器使用」を伴う治安維持活動も実施できるようにしようとしています。

地方選で「ノー」の審判を

 安倍政権は4月中旬に「戦争立法」の法案要綱について与党協議を再開し、5月中旬には国会提出を強行する構えです。日本を「戦争する国」にしないため、国民の意思を示す絶好の機会である、いっせい地方選で「戦争立法ノー」の審判を下すことがいよいよ重要です。