主張
原発「リプレース」
喉もと過ぎれば“焼け太り”か
東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発の重大事故後、原発依存度を次第に低下させる「縮・原発」を主張してきた財界団体の経済同友会が、「相当な期間、ベースロード電源として原発を活用する」立場に転換し、原発の運転延長に加え、「リプレース」(建て替え)や新増設も求める方針を打ち出しました。安倍晋三政権の原発を「重要なベースロード電源」とする立場の後押しです。安倍政権が決めたエネルギー基本計画にもとづき2030年の原発依存度をどの程度にするかの検討も大詰めです。「原発ゼロ」の世論を踏みにじる動きは見過ごせません。
安全神話の復活そのもの
安倍政権が昨年4月に決めたエネルギー基本計画は、原発を「重要なベースロード電源」とする一方、「原発依存度は可能な限り低減させる」としており、具体的な原発依存度の目標は打ち出せていません。30年に向けて原発依存度の目標を決めようというのが、経済産業省・資源エネルギー庁の審議会で本格化させている「エネルギーミックス(電源構成)」の検討です。長期にわたり原発に依存しようという電力会社や財界は、原発依存度の目標をできるだけ高くするよう、圧力をかけ続けています。
代表的な財界団体の日本経済団体連合会(経団連)は、「25%超」の目標を掲げています。電力業界には30%以上を求める声もあります。これまで「縮・原発」を標(ひょう)榜(ぼう)していた経済同友会の方針変更は、原発依存に拍車をかける、軽視できない財界の動きです。
原発には運転開始から40年たてば原則廃炉にするというルールがあり、最近も関西電力美浜原発(福井県)など5基の原発が廃止を決めました。このままではすべての原発が再稼働しても原発依存度は十数%にしかならないというので、電力会社などがまず狙っているのが、運転期間の延長です。老朽化した原発の運転は、事故の危険をいっそう拡大します。
しかもそれだけでは限界があると、電力会社や財界が要求しているのが、「リプレース」と呼ばれる既存の原発の建て替えや原発の新増設です。経済同友会は、30年の原発依存度は「20%程度を下限」とし、30年以降は「リプレース」や新増設で原発依存度を確保するよう求めています。まさに、長期にわたって原発依存を続けようという露骨な要求です。
経団連や経済同友会など財界団体は「より高い安全性を備えた原発へのリプレース」などといいますが、「最新鋭」なら「安全」といえる保証はどこにもありません。原発が大型化すれば、事故が起きた場合の被害も大型化します。
「原発ゼロ」の声に応えよ
安倍政権が長期的な原発依存度の目標を決めきれないできたのは、原発事故が4年たっても収束しておらず、「原発ゼロ」を求める圧倒的な国民世論を無視できなかったからです。電力会社や財界が、事故は「喉もとを過ぎた」といわんばかりに原発の建て直しや新増設まで勝手に持ち出すのは、国民の安全をかえりみないものです。老朽化した原発の廃炉も“焼け太り”を狙っているのと同然です。
原発が事故を起こせば取り返しがつかない被害を及ぼします。危険な原発への依存ではなく、「原発ゼロ」を求める圧倒的な世論に応えることこそ政治の責任です。
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