主張
西川農水相辞任
返した、辞めただけでは済まぬ
国から補助金を交付される企業などからの献金が批判されてきた西川公也農水相が辞任し、林芳正前農水相に交代しました。西川氏はすでに献金は返したと主張し、辞任で幕引きとしたい意向のようですが、政治資金規正法に違反する企業献金を受け取っておいて、返した、辞めたで済むものではありません。徹底した真相究明とともに、西川氏を農水相に起用し、かばい続けてきた安倍晋三首相の責任が問われます。
説明責任果たしていない
西川氏は23日夕方安倍首相に辞表を提出したあと、記者団に「私がいくら説明しても、分からない人には分からない」とうそぶきました。西川氏がまったく反省していないことを示すものですが、西川氏が説明しているなどというのはまったくのウソです。
これまでも「政治とカネ」をめぐる数々の疑惑を追及されてきた西川氏が改めて追及を受けることになったのは、国からの補助金に絡む企業献金が相次いで明らかになったからです。西川氏が2012年9月に300万円の企業献金を受け取っていた木材加工会社は、その4カ月前に7億円の補助金を国から交付されることが決まっていました。西川氏が13年7月に100万円の企業献金を受け取った精糖業界の関連企業は、その企業が管理するビルに同居する業界団体に同じく4カ月前に13億円の補助金交付が決まっていました。
政治資金規正法は国から補助金などを交付される企業が、交付の決定から1年以内に献金することを禁止しています。献金した側も、補助金が交付されていることを知って献金を受け取った側も、罰則があります。西川氏は木材加工会社が補助金を交付されているとは知らなかったと言い張りました。しかし、献金がばれそうになるとひそかに返しています。後ろめたかったのは明らかです。
西川氏は精糖業界の関連企業の場合は補助金を交付される業界団体とは別だと言い張りました。しかし、所在地も代表など主な役員も同じでこの言い逃れは通じません。より悪質な規制逃れの疑惑が濃厚です。国内産の砂糖は環太平洋連携協定(TPP)で例外を求める農産品の「重要5項目」のひとつで、自民党のTPP対策委員長や農水相を務めた西川氏への献金は見返り献金の疑いさえあります。献金は返し、西川氏が辞任しても疑いは消えません。
西川氏が企業献金を受け取ったのは、西川氏が代表を務める自民党支部を通じてです。企業献金は文字通り腐敗政治の温床であり、企業献金に抜本的なメスを入れることがいよいよ不可欠です。
問われる首相の政治責任
西川氏の辞表提出を受け、安倍首相は慰留したことを明らかにするとともに、「任命責任は私にある」などと発言しました。昨年9月の内閣改造のあと、「政治とカネ」の疑惑で小渕優子前経済産業相や松島みどり前法相が辞任し、江渡聡徳前防衛相は第3次政権での入閣を辞退したのに、安倍首相は西川氏については起用を続け、露骨にかばってきました。首相の政治責任は重大です。
自民党総裁でもある安倍首相が、西川氏に真相を明らかにさせるのは当然です。西川氏が進めたTPP交渉や「農協改革」の強行が許されないのは当然です。