沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐり、政府は3月までに海底ボーリング(掘削)調査を終え、4月以降、埋め立てを含む本体工事へ突き進もうとしています。緊迫した現局面をどう見るのか。日本共産党の赤嶺政賢衆院議員(党沖縄県委員長)に聞きました。
―安倍首相は県知事選や総選挙で示された新基地ノーの民意を「真摯(しんし)に受け止める」といいながら、選挙前とまったく同じ言い分で新基地建設の作業を強行しています。
道理のない巨大新基地
赤嶺 私は1月30日の衆院予算委員会で、「その政府のごまかし答弁にノーをつきつけたのが、この間の知事選だった。首相の答弁は破綻している」と述べました。
首相は「普天間基地の単なる移設ではない」と言いますが、そう言いたいのはこちらです。「単なる移設」どころか、2本の滑走路と300メートル近い岸壁が建設され、4万トンを超える強襲揚陸艦が接岸できる巨大新基地ができます。
戦後70年間米軍基地に苦しめられてきた沖縄で、なぜ新たに200年先まで使えるような新基地を押しつけられなければならないのでしょうか。
―政府の強行姿勢に対して、現地では怒りが強まっています。
赤嶺 沖縄防衛局は「新基地ノー」の民意を無視し、今年1月に作業を再開しました。
防衛局は、臨時制限区域を示すブイ(浮標)やフロート(浮具)を台風で流されないようにするためとして、最大45トンもの巨大なブロックや鋼製アンカーを海中投下し、サンゴを損傷するなど、海の破壊を繰り返しています。一方、海上からの抗議行動は、海上保安庁が力で押さえつけています。
県の権限で止められる
このような横暴に、県民から悲痛な叫び声が上がるのは当然です。ただ、実際に追い詰められているのは政府の側です。実際、県民の側には新基地建設を止めるための手段はいくらでもあります。
まず、翁長雄志(おなが たけし)知事は、仲井真弘多前知事による埋め立て承認の法的瑕疵(かし)の有無を検証する「第三者委員会」を設置しました。知事が承認の取り消し・撤回に踏み切れば、その瞬間、政府は法的根拠を失い、工事が止まります。6月から7月にかけて結論を出すことになりますが、第三者委員会に専門家の知見も集めて、しっかり支えていくことが必要です。
また、沖縄県は巨大ブロックの設置が、仲井真県政が出した「岩礁破砕許可」にも違反している疑いがあるとして、作業の一時停止指示や許可の取り消しを検討しています。
岩礁破砕許可は新基地建設のための埋め立て予定区域内に限っていますが、多くのブロックがこの範囲を超えて投入されています。翁長知事も13日の記者会見で、「区域外に投入されている」との見方を示し、「一時停止」を国にもとめると表明しています。
また、沖縄防衛局は「ボーリング調査のため」として、事実上の埋め立てである仮設桟橋の建設を計画していますが、最近、沖縄県に報告せず設計を変更していたことが明らかになりました。県もこれを問題視しており、取り消しも視野に入れています。
仮に政府がこれらを強行突破して3月中にボーリング調査を終えても、その後につくる基本設計を沖縄県当局と協議することが、埋め立て承認書に明記されています。
加えて、新基地計画には、名護市の許可が必要な項目があります。沖縄防衛局は稲嶺進名護市長の理解が得られないとして、昨年9月に埋め立て申請の変更を4件申請しました。
このうち2件は、新基地推進の仲井真前知事でさえ承認していません。このため、防衛局は埋め立て土砂の採取地変更など、重大な計画変更を余儀なくされています。しかも、新しい土砂採取地を見つけても、今度は翁長知事から承認を得ないといけません。
内外の世論広げて阻止
政府は「工事を粛々と進める」といいますが、実際はこれだけのハードルを越えないといけないのです。日米合意では、新基地の工期は5年となっていますが、防衛省当局者でさえ、「粛々と進むのは2年間だけ」と見ています。それ以降は、埋め立て申請の変更分について新たに翁長知事から承認を得なければならないからです。しかも、その「2年間」ですら、これまで述べたように「粛々」と進むわけではありません。
昨年、新基地に反対する名護市長を再選させ、県知事を誕生させたことが、大きな力になっています。「オール沖縄」の力で県知事と名護市長を支えて、団結してたたかっていけば、この基地建設は手続き上も止まらざるをえません。私たち県政与党も、県に対して積極的な提起をしていきます。
―手続き面で阻止していくことと併せて、現地でのたたかいが重要ですね。
赤嶺 今、沖縄県民は海上抗議行動とキャンプ・シュワブのゲート前での座り込みをたたかっています。座り込みは24時間態勢です。参加者は県内各地や全国から、日に日に増えています。
沖縄本島中部の読谷村(よみたんそん)では、村や自治会など9団体による、新基地阻止の「村民会議」を発足させ、週末にはバスを出して辺野古の行動に参加しています。また、那覇市や沖縄市などからバスを定期運行し、県内各地から参加者を募る取り組みも続いています。
22日に辺野古で行われる海上デモ、ゲート前での抗議行動は2000人以上の参加を目指しています。これを成功させることが重要です。
加えて、辺野古の問題の大本にある普天間基地の問題は「たらい回し」では解決しない、2013年1月に政府に提出した「建白書」に基づいて、「閉鎖・撤去」しかないという世論を沖縄県内だけでなく日本全国に広げていくことが必要です。米国でも、良識ある知識人が、普天間基地問題で「(移設)条件がつくことは本来的に許されない」と指摘しています。
大綱引きの粘り強さで
辺野古問題にかかわってきたベテラン弁護士は「このような国の動向に動じず、たたかう」と話していました。翁長知事、稲嶺市長はあらゆる手段を使って辺野古新基地建設を止めると再三にわたって表明しています。いま辺野古のたたかいは、沖縄の大綱引きによくみられる根気くらべの局面です。絶対に負けないという、粘り強いたたかいで輪を広げていきましょう。
安倍政権の強硬姿勢は軽視できませんが、これは従来の自民党政府なりの「懐柔策」が通用しなくなり、むき出しの強行策しかなくなっていることの現れです。このような暴走を許さない県民の「島ぐるみ」のたたかいをなおいっそう高めずにはいられないでしょう。
聞き手・竹下岳