主張
ODA大綱改定
「非軍事」原則の骨抜き許すな
安倍晋三内閣は10日の閣議で、途上国などに資金や技術の提供を行う政府開発援助(ODA)の長期戦略を定めた「ODA大綱」を12年ぶりに改定した「開発協力大綱」(名称も変更)を決定しました。安倍首相が唱える「積極的平和主義」の下、他国軍に対する支援の一部解禁を初めて明記し、開始から60年を超えた日本のODAのあり方を大きく転換しようとする重大な内容になっています。
軍事転用防ぐ保証なし
1992年に初めて策定され、2003年に一度改定された「ODA大綱」は、「援助実施の原則」として「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する」ことを掲げてきました。今回改定された新「大綱」も、「開発協力の軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避するとの原則を遵守」するとしました。
一方で、これまでの「大綱」にはなかった「民生目的、災害救助等非軍事目的の開発協力に相手国の軍又は軍籍を有する者が関係する場合には、その実質的意義に着目し、個別具体的に検討する」との文言を新たに追加しました。他国軍への支援であっても、「民生目的」「非軍事目的」であれば容認することを明記したものです。
軍への支援である限り、「民生目的」で提供した物資や技術は、軍事転用される危険があります。新「大綱」が「重点課題」に挙げた「海上保安能力を含む法執行機関の能力強化」や「治安維持能力強化」のための軍への支援は、軍事能力の強化に直結するものです。
外務省が昨年11月に開催した公聴会でも、軍事転用をいかに防ぐのかという疑問が相次ぎました。同省は「二重三重の縛りをかけて慎重に検討する」「支援後もモニタリング(監視)していく」と答えましたが、新「大綱」はそのための具体的な基準や制度的仕組みに全く触れていません。他国軍の運用を追跡調査するのも困難です。
新「大綱」は、安倍内閣が13年末に閣議決定した「国家安全保障戦略」で「ODAの積極的・戦略的活用」を打ち出したのを受け決定されたものです。同時に、「国家安保戦略」は、武器輸出を禁止した「武器輸出三原則」に代わる新原則の策定も盛り込み、14年春に武器輸出は原則解禁されました。
この点にかかわって見過ごせないのは、防衛省が武器輸出促進のため、日本の軍需企業から武器を購入する途上国などに武器購入資金を低利で融資したり、政府自らが武器を買い取り贈与したりする援助制度を検討していると報じられていることです。「軍事用途版ODA」(「東京」1月1日付)と指摘されており、「軍事的用途の回避」というODAの原則は完全に空洞化することになります。
国際的な信頼掘り崩す
03年の「ODA大綱」改定の際の閣議決定は「日本国憲法の精神にのっとり、国力にふさわしい責任を果たし、国際社会の信頼を得る」と強調していました。日本のODAが「非軍事」を原則にしてきたのは日本国憲法があるためです。安倍内閣が憲法を踏みにじり同原則に風穴を開けようとしている背景には、「積極的平和主義」の名で進める「海外で戦争する国」づくりがあります。日本が築いてきた「国際社会の信頼」を、「国益」の名で台無しにしかねない新「大綱」は許されません。
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