主張

通常国会首相答弁

国民の声に向き合う姿勢ない

 昨年末の総選挙を受け第3次安倍晋三政権が発足して初の通常国会の論戦が始まっています。通例なら新政権の発足を受けた首相の所信表明演説からスタートするのに、補正予算案の審議のため先送りされ施政方針演説と一体にされるという異例の幕開けです。所信表明抜きに始まった論戦での安倍首相の答弁は、消費税増税など経済政策でも原発再稼働や沖縄の新基地建設でも、これまでの方針を繰り返すものばかりです。総選挙を通じて示された国民の声に向き合う姿勢はありません。これまでの道をまっすぐ進むというだけでは、国民無視の暴走そのものです。

失政への反省どころか

 財政演説に対する衆参の代表質問に続き、衆院の予算委員会も始まりました。安倍首相は、消費税増税などによる経済悪化に対する質問には安倍政権の経済政策「アベノミクス」による「経済の好循環が生まれ始めている」と開き直り、2017年4月に延期した消費税の再増税についても「確実に実施する」というだけで、経済失政への反省はありませんでした。

 東京電力福島第1原発の事故も収束していないのに、全国で停止中の原発を再稼働させようとしているのを批判されても、「原発が停止し、燃料輸入増で国富が海外に流出している」などと、原発依存を反省するどころか積極的に再稼働を推進する答弁です。

 際立ったのは沖縄での米軍新基地建設についての答弁です。沖縄県民が新基地建設に反対していることが昨年の県知事選や総選挙での沖縄の全小選挙区での反対派の勝利で浮き彫りになっているのに、安倍首相は「新基地建設が唯一の解決策だ」と繰り返すだけでした。新基地に反対する知事に会おうともせず建設に向けた作業をすすめることが民主主義に反すると批判されても、そうは考えていないと開き直るありさまです。安倍首相には国民の意思を尊重する姿勢がまったくありません。

 安倍首相は昨年の総選挙後、「この道しかない、の訴えが支持された」「あらゆる改革を大前進させる」などと、国民の意思に関わりなく、自ら掲げる路線を突き進む発言を重ねています。その発言は総選挙中まともに説明もしなかった「憲法改正」まで国民に支持されたようにいい、その実行を宣言するほど異常なものです。

 総選挙で自民党が議席をわずかに減らすだけですんだのは、比例では17%の得票なのに全体の61%の議席を確保できた選挙制度のゆがみのおかげで、選挙結果が安倍政権を信任したものでないのは明らかです。さすがに安倍首相も、「白紙委任とは考えていない」と答弁しましたが、実際には国民に向き合う姿勢はみせていません。文字通り暴走そのものの態度です。

国民の声で追い詰める

 総選挙後も国民が、安倍政権の進める消費税の増税や原発再稼働、沖縄新基地建設などを支持していないのは明白です。原発再稼働を「進めるべきではない」が52%、集団的自衛権行使に関する法整備に「反対」が49%、憲法改正に前向きな首相を「評価しない」が45%(いずれも「日経」26日付)―。

 安倍政権の暴走を許さないことが急務です。国会での論戦とともに、国会の外での国民の世論と運動で安倍政権を追い詰め、包囲していくことが重要です。