主張

「残業代ゼロ」法案

「過労死」促進の改悪やめよ

 労働者に残業代も払わず何時間でも働かせ、文字通り「過労死」を促進する、「残業代ゼロ」法案の検討が重大段階を迎えています。厚生労働省が労働者、経営者などで労働法制を検討する労働政策審議会(労政審)の労働条件分科会に労働時間法制等のあり方についての報告書骨子案を提出、とりまとめをねらっているからです。労政審でまとまれば安倍晋三内閣は通常国会に法案を提出する構えです。「残業代ゼロ」法の制定は、財界・大企業が長年にわたって求めてきたものです。安倍内閣による「残業代ゼロ」法案の強行を許さないたたかいが求められます。

「8時間労働」が原則

 長時間労働を規制し、労働者の健康破壊を許さないことは、労働者と家族の切実な願いです。労働基準法など日本の労働法制も「8時間労働」を明記しています。

 ところが財界本位の歴代政府や労働者を雇用する大企業は、企業が労働者と協定を結び、残業代を支払えば残業させることができ、法律には残業時間の上限が明記されていないことを利用して、労働者に事実上無制限に残業を押し付けてきました。日本の労働者の労働時間は世界の主な国のなかでもっとも長く、残業代を払わない「サービス残業」や世界に例のない「過労死」などの異常も、あとを絶ちません。

 財界・大企業が長年ねらってきたのは、労働時間を規制するしくみそのものを廃止することです。経団連が2005年に「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入を提唱し、事務職の賃金は「時間」ではなく「成果」で決めるなどといったのは、そのさいたるものです。当時の第1次安倍内閣は、財界のいいなりで同制度の導入を目指しましたが、「残業代ゼロ法案だ」「『過労死』促進法案だ」との批判で断念しました。

 12年末の安倍内閣復活後、労働時間法制の見直しが改めて持ち出されてきたのは、安倍内閣と財界・大企業の執念によるものです。安倍内閣はすでに「成長戦略」で労働時間法制の見直しを決めており、今回いよいよ法案提出の最終段階ともいえる労政審での取りまとめに踏み出したわけです。

 厚労省が提出した骨子案は、一定の年収があり、職務の範囲が明確で「高度な職業能力を有する」労働者に、時間外・休日労働協定の締結や割増賃金の支払い義務を「除外する」としています。労働時間に関わるいっさいの規制から外され、文字通り「残業代ゼロ」の労働を強制するものです。骨子案で「1075万円」とされた「一定年収」の条件も、いったん制度が導入されれば引き下げられる恐れがあります。財界・大企業の年来の課題を実現するねらいは明白であり、法案のとりまとめを始めた安倍内閣の責任は重大です。

長時間労働の規制こそ

 厚労省の骨子案は、「働きすぎ防止のための法制度の整備」も掲げていますが、中身は「監督・指導の強化」「政労使の自主的取り組み」などで、多くの国では当たり前の、時間外労働の上限規制や残業割増率の引き上げさえありません。財界・大企業にとって痛くもかゆくもありません。

 異常な長時間労働の是正は待ったなしです。労働時間法制の改悪ではなく、規制そのものを強化し、大企業に守らせるべきです。