主張

2015国民春闘

賃上げこそ経済の好循環の道

 労働者の実質賃金が低下し、日本経済が低迷するもとで、2015国民春闘への社会的期待は、かつてなく大きなものがあります。

 安倍晋三内閣は、一昨年に続き「政労使会議」を開き「経済界は、賃金の引上げに向けた最大限の努力を図る」とした「合意文書」をまとめました。マスメディアも「賃上げは社会的な責務だ」(「産経」)などと主張しています。これを受けて財界の中からも「ベースアップ容認」などの発言がでています。

内部留保活用の合意

 労働側は、全労連が「月額2万円以上」(5%強)の賃上げ、連合も、「2%以上のベア」(定昇を加え4%以上)と、いずれも昨年以上の要求をかかげています。

 春闘への期待が高まっている背景には「アベノミクス」の破たんが明らかになるなかで、賃上げが避けられない課題になっていることがあります。全労連と国民春闘共闘が一貫してかかげてきた「大企業の内部留保を活用し、大幅賃上げで景気の回復を」という方針が、深刻な経済実態からも、社会的合意を形成しつつあります。多くの経済学者からも「内部留保で経済の資金循環がせき止められている」との批判が上がっています。

 大企業の内部留保を活用した賃上げ、中小企業支援を拡大しての最低賃金の抜本的引き上げ、雇用のルールの強化こそ、経済の好循環の道です。

 財界は、「賃金の引き上げ=ベアといった単純なものとはならない」ともいっており、「政労使合意」では、「賃金体系の見直し」、すなわち成果主義の導入による賃金破壊が盛り込まれました。「ベアゼロ」の壁を突き崩すためには、いっそうのたたかいとさらなる世論形成が必要です。

 安倍内閣は、労働法制の大改悪、派遣労働の全面解禁と固定化、低賃金で解雇しやすい「限定正社員制度」の整備、「残業代ゼロ」制度の導入をねらっています。

 これでは組織労働者が賃上げを勝ち取っても、労働者全体の低賃金化がすすめられ、貧困と格差、経済の低迷からの脱却はできません。公務員賃金の引き下げは、さらにマイナス効果を及ぼします。

 全労連も連合も共通してかかげる「すべての労働者の賃金の引き上げ」「誰でも時給1000円」、非正規で働く労働者の賃金の底上げと均等待遇、中小・未組織への賃上げの波及とともに、労働法制改悪による雇用破壊を許さないたたかいが重要です。

地域から共同の探求を

 1950年代に、産業別労働組合の共同闘争として始まった春闘は、70年代には国民的諸課題をかかげ共同を広げる国民春闘として、国民的エネルギーを引き出し、発展してきました。

 消費税増税反対、暮らし第一の経済再生、憲法9条を守れ、原発ゼロ、基地のない沖縄―たたかう労働組合と広範な国民が一点共闘で取り組んできた諸課題は、どれもそのまま国民春闘の要求です。

 15春闘は、いっせい地方選挙とも重なります。住民の福祉を守る地方自治体の役割や地域経済の疲弊も大きな争点となります。地域春闘は全労連の強みですが、今年は連合も地域を重視しています。

 地域は未組織労働者との出会いの場でもあります。地域での共同を探求し、住民活力の高揚のなかで国民春闘をたたかいましょう。