2013年度(13年4月~14年3月)に自衛隊と米軍が実施した共同演習(日米が参加した多国間共同演習を含む)が少なくとも74回、のべ915日間にのぼり、回数・日数ともに過去最多となることが分かりました。防衛省への情報公開請求で入手した資料から本紙が集計しました。のべ日数が過去最多となるのは12年度に続いて2年連続。
東日本大震災の影響から前年度比で微減となった11年度を除き、過去5年間の演習日数は一貫して増加傾向にあります。(グラフ)
13年度の日米共同演習を象徴するのが、米カリフォルニア州で行われた大規模な強襲上陸訓練「ドーン・ブリッツ(「夜明けの電撃戦」の意味)」(13年5~6月)です。同訓練はこれまで米軍単独で行われてきたものですが、13年は陸海空の3自衛隊が海外で初めてそろって参加した共同統合訓練として実施されました。
陸上自衛隊は2005年以来、米国で海兵隊との共同訓練を重ね、上陸作戦の技術を吸収してきました。しかし、今回の「ドーン・ブリッツ」では、陸自に加えて海上自衛隊のヘリ空母や大型輸送艦も投入して、上陸部隊のための海上拠点の役割を果たしました。
自衛隊の準機関紙「朝雲」は「新たな共同統合運用の幕開け」などと報じ、写真特集を2回にわたり連載しました(13年6月20日、27日付)。海外への侵攻能力を高める「海兵隊化」の動きが、陸海空3自衛隊の統合作戦として遂行する新段階に入ったことを意味します。
統合運用 二つ以上の軍種(例えば空軍と海軍)が単一の指揮下で一体に作戦任務を行うこと。自衛隊が統合運用への移行を進める背景には、部隊の行動を迅速にするとともに、統合軍を基本とする米軍との一体化を促進する狙いがあります。
米戦略下で同盟の多角化/日米共同演習
日米共同演習が年々拡大を続ける背景には、日米2国間演習の日数増とともに、多国間演習へ自衛隊と米軍がそろって参加する機会が増えている実態があります。日米豪や日米韓など3カ国間の枠組みを近年ますます重視する米国の戦略下で、日米同盟はなし崩しで多角化しつつあります。
2013年度の日米共同演習ののべ日数は、陸上自衛隊を除いて、統合幕僚監部、海上自衛隊、航空自衛隊で軒並みの増(一覧表)。統幕と海自の多国間演習への参加が多く、全体の日数を押し上げる要因にもなっています。
とりわけ際立つのが、日米にオーストラリアを加えた枠組みの訓練。日米豪訓練は2007年から始まり、これまでは海自・空自を中心に共同訓練を重ねてきました。
13年度はこれに加えて、豪海軍主催の多国間共同訓練「トリトン・センテナリー」に海自が参加しました。これまで共同訓練が限られていた陸自も、豪陸軍主催の日米豪射撃訓練「サザン・ジャッカルー」に初参加し、陸海空の3自衛隊全体に広がっています。
日豪間には日米のように安保条約の締結はありません。しかし、日豪は共同訓練の拡大以外にも、物品役務相互提供協定(ACSA)、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を結ぶなど、3カ国の枠組みを足がかりに2国間関係を軍事同盟に近いレベルまで高めています。
また、訓練実績からは、ASEAN(東南アジア諸国連合)との対軍関係の強化を図る姿勢も読み取れます。13年度にはADMMプラス(拡大ASEAN国防相会議)の枠組みで初の実動演習(人道支援・災害救援など)に加え、インドネシア主催の多国間共同訓練「コモド」にも、日米が参加しました。
日本の太平洋周辺諸国との軍事交流拡大の背景には、同盟国・友好国との協力を強めて、軍事費削減による自らの力の低下を補おうとする米国の戦略があります。
米国防総省の戦略文書(QDR2014)は「リバランス(再配置)戦略の取り組みの中心は、豪州、日本、韓国、フィリピン、タイとの同盟関係の強化」だとして、「海外の多国間訓練施設を最大限利用する」と明記。ラッセル米国務次官補も昨年12月、日米豪や日米韓の3カ国関係を例に、「世界規模のグループより迅速に行動できる」と重視する考えを示しています。(ブルッキングス研究所での講演)
こうした方針は、改定作業が進む日米軍事協力の指針(ガイドライン)の中間報告でも、「地域の三カ国間、多国間の安全保障・防衛協力を推進する」と合意されています。
(池田晋)