主張
「積極的平和主義」
失うものはあまりにも大きい
安倍晋三首相は、戦後70年に当たる今年最初の記者会見で、集団的自衛権行使容認を柱とする「閣議決定」に基づき安全保障法制の整備を表明し、「日本は積極的平和主義の旗の下、世界の平和と安定のため一層貢献していかなければならない」と語りました。「閣議決定」は、一層の「国際貢献」として、海外での自衛隊による武器使用や他国軍隊への支援活動の大幅な拡大を打ち出しています。「積極的平和主義」に基づく「国際貢献」とは「海外で戦争する国」づくりにほかならず、憲法9条に基づく戦後日本の国のあり方を根底から覆そうとするものです。
国際的信頼一気になくす
安倍政権が昨年7月に強行した「閣議決定」は、「国際社会の平和と安定への一層の貢献」として、これまで禁じてきた「戦闘地域」での米軍など他国軍隊に対する自衛隊の支援活動をはじめ、武装集団に襲われたNGOなどを救援するため自衛隊が現場に駆けつけ武器を使用する「駆けつけ警護」や、「在外邦人救出」のための武器使用などを可能にする法整備を打ち出しました。
これに対し、世界の紛争地などで献身的に人道支援などのボランティア活動に取り組む多くのNGOは、「NGOを守る」という口実で自衛隊が武器を使用すれば戦闘の一方の当事者になりNGOをかえって危険にさらすし、自衛隊が他国民に銃を向けるようになれば世界が日本に寄せてきた信頼は憎悪に変わり、日本人はテロの対象にされ、「失うもの」はあまりに大きいと警告してきました。
「日本国際ボランティアセンター」(JVC)は声明で、米国の対テロ報復戦争後、「アフガニスタンにおいて日本が最も信頼される国と見なされてきた」とし、その理由として主要国のほとんどがアフガン本土に軍を派遣する中、日本だけは反政府武装勢力にも住民にも銃を向けなかったことの大切さを挙げています。
「政府の議論に欠けているのは、『失うもの』の大きさに対する認識」であり、「非軍事に徹した国際平和協力」こそが「他国にできない日本の独自性であり、これにより日本が国際的な信頼を獲得してきたことは、まぎれもない事実」(JVC声明)との指摘は説得力があります。
安倍首相の年頭会見には、こうしたNGOの警告が耳に入っている様子はみじんもありませんでした。首相が目指す「積極的平和主義」は「第二次世界大戦以降およそ70年間をかけて築き上げてきた資産や信頼」(JVC声明)を台無しにする危険な暴走です。
「戦争する国」許さない
今必要なことは、憲法9条の理念に沿って平和外交を進めることです。
日本の国際協力NGOのネットワーク組織である「国際協力NGOセンター」(JANIC)も、集団的自衛権を含む海外での武力行使容認に反対する声明で、国際社会には「紛争を軍事的な力によって一方的に解決を図ろうとする機運がある」とし、そうした中でこそ「紛争の原因を除去し、対話による解決をめざそうとする日本は、世界で独自の役割を果たすことができる」と強調しています。
日本の前途を危うくする「海外で戦争する国」づくりを許さない広大な国民的共同が重要です。