主張

戦争する国づくり

憲法9条壊す法制化許さない

 安倍晋三政権は今月下旬に開会予定の通常国会で、集団的自衛権の行使容認を柱にした「閣議決定」に基づき、「海外で戦争する国」を目指す立法措置を一気に推し進めようとしています。アジア太平洋戦争終結70年の今年、侵略戦争への痛苦の反省から生まれた憲法9条をなきものにしようとする安倍政権のたくらみを許さない、国民共同のたたかいを大きく広げることが重要です。

矛盾直面は避けられず

 自民党の谷垣禎一幹事長は昨年末、今年の通常国会が「安保国会」になると語りました。昨年の総選挙を受けて発足した第3次安倍政権で防衛相になった中谷元氏は就任記者会見で、集団的自衛権の行使をはじめ「閣議決定」の内容が「全て盛り込まれるような、一括的な法案が提出できることを目指している」と述べました。「閣議決定」を具体化する関連諸法案をまとめて準備し、一挙に国会に提出する狙いは明白です。

 しかし、昨年から大きな高揚をみせている集団的自衛権行使容認に対する各界各層からの批判、国民的な反対運動の下で、「閣議決定」を具体化する作業は、深刻な矛盾に直面せざるを得ません。

 「閣議決定」は、「国際社会の平和と安定への一層の貢献」という名目で、これまで活動が禁止されてきた「戦闘地域」でも米軍などに対する自衛隊の支援活動を可能にしました。政府はそのため、これまで派兵のたびに特別措置法をつくってきたやり方に代え、自衛隊をいつでも速やかに派兵できる恒久法制定の検討を始めたと報じられています。米国の求めに迅速に応えて自衛隊を戦地に派兵するのが狙いであり、日本の若者が戦場で血を流す危険を現実にするものとして極めて重大です。

 「閣議決定」は歴代政府の憲法解釈さえ踏み破り、他国への武力攻撃の発生により「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」には、日本への武力攻撃がなくても、「自衛の措置」として武力の行使=集団的自衛権の行使ができるとしました。政府はそのための自衛隊法改悪などを狙っています。

 元内閣法制局長官や外務・防衛両省元幹部らでつくる「国民安保法制懇」は、「他国への武力攻撃によって日本の政治体制が覆る『明白な危険』が現実化する」ことは「ほとんど想定しがたい」と指摘します。一方で「かつての『満蒙(まんもう)は日本の生命線』といった空虚なスローガンと同じ調子」で「明白な危険」が生じたと政府が判断し、集団的自衛権の行使が可能になれば、「客観的な歯止め」にはなり得ず、「自衛隊が武力を行使する範囲は、結局、地球の全域にわたることになる」と批判しています。

日本の侵略戦争を想起

 この点で安倍首相が、中東で紛争が起こった際、ホルムズ海峡が機雷で封鎖されれば原油の供給が停止するとの口実で、自衛隊が機雷除去という武力の行使に乗り出す可能性に言及していることは、際限のない海外での武力行使に道を開くものとして重大です。

 日本が「自衛の措置」として海外で武力を行使することは、日本の侵略戦争が「自存自衛」の名で進められたことを想起させます。日本を再び「殺し、殺される」国にしようとする安倍政権の企てを絶対に許してはなりません。