主張
日米軍事協力指針
再改定も法制化も中止にせよ
日米両政府は、年内で合意していた「日米軍事協力の指針」(ガイドライン)再改定を来年前半に先送りすると発表しました。日米の外交、軍事担当閣僚の共同発表によると、安倍晋三首相が、集団的自衛権の行使を容認した「閣議決定」に基づき、来年の通常国会への提出を明言している安保関連法案との「整合性を確保」し、「見直し後の指針がしっかりとした内容となる」ようにするためです。「指針」再改定は、自衛隊が地球的規模で米軍と共同で戦争に乗り出すことを取り決めるものです。先送りではなく、法案化作業とともに、きっぱり中止すべきです。
過半数が安保政策不支持
日米両政府は、昨年10月の外交、軍事担当閣僚による「安全保障協議委員会」(2プラス2)で、今年末までの「指針」再改定で合意していました。今年10月には「中間報告」を公表し、再改定は「閣議決定の内容を適切に反映」するとし、自衛隊による米軍支援の地理的制約をなくし、これまで自衛隊の活動が禁止されてきた「戦闘地域」でも実施を可能にする危険な方向を打ち出しました。一方で、総選挙の実施などにより、「閣議決定」に基づく法案化作業は進んでいません。
総選挙後、安倍首相が、「閣議決定」の法制化について「支持をいただいたわけで、当然、約束したことを実行していく。政権としての使命だ」と表明し、自民党と公明党の連立政権合意で「閣議決定に基づく安全保障関連法案を速やかに成立させる」としたことは重大です。来春のいっせい地方選後に、安保関連法案の国会提出と「指針」再改定を一気に進める狙いは明らかです。
国民は今回の選挙で、「閣議決定」とそれに基づく法制化を信任したわけではありません。
首相は、総選挙公約にも明記したし、選挙戦でも訴えたと述べますが、通用しない言い分です。政治学者からも「膨大な数の政策提案が並ぶ(自民党の)政権公約(政策BANK)での扱いも極めて小さい」し、「安倍首相の主導で集団的自衛権についての『解釈改憲』を提起してから半年以上がたち、日米間でも様々な交渉がなされているはずなのに、何をどういう方針で具体化するのかは全く触れられないままだった」(野中尚人学習院大学教授、「日経」19日付)という批判が上がっています。
総選挙後の共同通信の世論調査(15、16日実施)では、「憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認など、これまでの安倍政権の安全保障政策を支持しますか」との質問に対し、「支持しない」が55・1%に達し、「支持する」の33・6%を上回っています。
再び「戦争する国」にせず
「指針」再改定の先送りを明らかにした2プラス2の共同発表が、再改定の作業について「アジア太平洋地域及びこれを越えた地域に前向きに貢献する」と強調しているのは、地球的規模で自衛隊と米軍が肩を並べて戦争する体制づくりに狙いがあることをあからさまに示しています。
来年は、第2次世界大戦終結70年です。日本を再び「海外で戦争する国」にすることは、歴史の教訓に背く重大な逆流です。「指針」再改定、「閣議決定」の法制化を許さない世論と運動をいっそう強く大きくすることが求められます。
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