前回2012年総選挙の公約で一言も触れなかった秘密保護法を強行した安倍政権。今回の総選挙では「一つひとつ信を問うことじゃない」(菅義偉官房長官の19日の会見)などとして、秘密保護法の問題をやり過ごそうとしています。しかし、「何が秘密かも秘密」のまま国の重要情報を国民から隠し、近づこうとする国民・メディアに重罰を科す同法への危惧の声は強く、来月10日の施行を前に総選挙での大争点の一つに浮上しています。

 衆院を解散した21日夜の記者会見で、「この解散はアベノミクス解散だ」と強調した安倍首相は、記者から「秘密保護法や集団的自衛権も争点に位置づけないのか」と問われ、「一昨年の総選挙、昨年の参院選挙でも情報保全の仕組みをしっかりと法整備すると約束してきた」と述べました。

 しかし、自民党の12年の総選挙や昨年の参院選の総合公約集には、「情報保全に関する法整備」の記述があっただけ。「秘密保護法」の文字もなく、その柱立てすら示されていません。到底、公約を掲げて審判を受けたなどといえません。

 安倍首相は、主権者に公開されるべき情報が恣意(しい)的・無限定に「秘密」指定される危険について、「重層的なチェック体制」を設けたなどとごまかしを続けてきました。

 この点でも日本共産党の追及で矛盾と破綻が明白となっています。

 11月4日の参院予算委員会で仁比聡平議員は、政府が「運用の適正を確保するために二重三重の仕組みを構築した」とする独立公文書管理監、内閣保全監視委員会について追及。独立公文書管理監の任命は首相が行い、情報保全監視委員会は首相を補佐する機関であることを明らかにし、首相が首相をチェックする“自己チェック”では何らの規制にならないと批判しました。(図参照)

 これに対し安倍首相は、自己チェック体制であることを否定せず、「民主主義の機能というのは、選挙によって政権交代していくなかで、後の政権によってそれは十分にチェックされる」と答弁しました。しかし、「政権交代によってチェック」とは、まさに法律の中にチェックの仕組みがないことを“自白”したものです。

 さらに安倍首相は「根本から悪意によって運用されると考えられてしまえばお答えのしようがない」などと答弁しました。「悪意ある運用」をチェックできないようでは、チェックの役割は果たせません。

 秘密保護法は、軍事と政府の利益優先で、国民の目、耳、口をふさぎ、民主主義を破壊する違憲立法です。そのなかで、行政機関の秘密指定が恣意的に拡大する致命的危険が明らかになっています。
(中祖寅一)

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