主張

「派遣法」審議入り

雇用破壊の逆流は許されない

 派遣労働を無制限・無期限に拡大する労働者派遣法改悪案が衆院で審議入りしました。これまで派遣労働の大原則だった「常用雇用の代替禁止」「臨時的・一時的業務に限定」を覆す重大な改悪です。正社員の派遣労働者への置き換えを際限なく広げ、派遣で使い続けることができる改悪案に国民が批判の声を上げています。今国会成立を狙う安倍晋三政権の強行を許さず、廃案に追い込むたたかいをさらに広げることが急がれます。

働く人すべてに影響

 改悪案は、いままで「専門26業種」と指定してきた期限のない派遣の業種区分の撤廃や、延長しても3年が上限だった派遣の期間制限をなくすなどというものです。

 1985年に成立した労働者派遣法はこれまで何度も改悪され、低賃金で不安定な雇用で働く派遣労働者を増加させ続けてきました。それでも「派遣労働を常用雇用に代替してはならない」「派遣の受け入れは一時的・臨時的な業務に限る」という大原則は繰り返し確認してきました。

 企業が労働者を直接雇用することが基本ということが、世界では当たり前であり、戦後の日本の労働法制でも根幹です。安倍政権の改悪案は、歴代自民党政権が長年できなかった問題に踏み込もうというものです。これは財界の悲願です。審議入り前日(27日)、経団連の榊原定征(さだゆき)会長が「よい方向になる」と改悪法成立に強い期待を表明したことからも明らかです。

 安倍首相らは改悪を正当化するため「派遣労働者のキャリアアップを支援する」と強調しますが、「配慮・努力義務」にとどまっており、実効性はありません。それどころか、派遣先の企業が派遣労働者の「働きぶり」などの情報を派遣元の企業に提供する規定が盛り込まれました。このため、現在は認められていない派遣先による労働者の「選別」につながる危険が指摘されています。

 政府の各種調査では、派遣社員の4割以上は正社員を希望しながら、なれなかったので非正規を選んだと答えています。「キャリアアップ」というなら、正社員への道を広げることを急ぐべきです。

 首相も財界も「わかりやすい制度にする」と盛んにいいますが、狙いは企業に“使い勝手の悪い縛り”の撤廃です。財界・企業にとって都合のよい仕組みは、労働者に不利益しかもたらしません。

 正社員化の道を閉ざし、いつまでも派遣を使い続けることができる派遣法大改悪は、労働者全体にかかわる大問題です。「常用雇用代替禁止」の大原則を崩せば、正社員や直接雇用から、派遣への置き換えが大規模にすすむ危険があります。正社員の解雇や派遣への「変更」が行われ、直接雇用の契約社員やパート労働者が、契約を更新するときに派遣への「転換」を迫られることになります。

 「生涯ハケン」「正社員ゼロ」の社会をつくりだすことなど絶対にあってはなりません。

再び廃案に追い込み

 労働者派遣法改悪案は今年初めの通常国会に一度提出されましたが、国民の批判の広がりなどで一度も審議できずに廃案になりました。本来なら再提出などできないはずのものです。国民の願いに逆らい雇用破壊に暴走する安倍政権を追い込む、国民的共同をさらに強めることが必要です。