自らの政治団体の不明朗な政治資金の収支報告をめぐって経産相を辞任(20日)した小渕優子衆院議員(自民党)。ことの性質をみれば、大臣どころか、国会議員を務める資格さえないことがはっきりしてきます。
問題の核心の第一は、地元有権者の「観劇会」を催した際、その経費の大半を「小渕優子後援会」と「自民党群馬県ふるさと振興支部」が負担していたことです。これは、選挙区の有権者への利益供与や供応接待を禁止した公職選挙法199条に違反します。
小渕氏の政治資金収支報告書を見ると、問題の「観劇会」にかかった経費は約3385万円(2010~11年分)なのに、参加者からの参加費収入は約742万円(同)しかありません。その差額=約2643万円を後援会とふるさと振興支部が肩代わりしています。これは、利益供与や供応接待そのものです。後援会は、他にも「野球観戦」などさまざまな行事の費用を肩代わりしています。
ミスで済まない
当選のために利益供与・供応接待をしていたとなれば、公選法221条の「買収」罪にあたります。まさに議員の資格が問われています。
小渕氏は辞任表明会見で、参加者に観劇費用を支払ってもらっていたと説明しました。仮に参加者の実費負担が証明できたとしても、集めたカネは一体どこに消え、何に使ったのかが問われます。“収支報告書の記載ミス”で済むような話ではありません。
献金で「観劇」に
問題の核心の第二は、「観劇会」の差額を埋めたカネの元は、企業・団体献金やパーティーの利益だということです。
政治資金収支報告書では、後援会の収入は、事実上の企業・団体献金にあたるパーティー券収入が大半を占め、ふるさと振興支部の収入も企業・団体献金がほとんどです。つまり、小渕氏は、企業・団体献金で地元有権者を「観劇」に連れて行ったことになります。政治をカネで買う企業・団体献金の害悪は明らかです。
安倍晋三首相は、「任命責任は首相である私にある」(20日)と述べました。しかし、カネの力で政治や選挙をゆがめることの重大性を認識しているのでしょうか。
その点では、今年9月、経団連が会員企業・団体に自発的な政治献金を呼びかける方針を決めた際に、自民党は「大変ありがたい」(谷垣禎一幹事長)と頭を下げました。この旧態依然とした金権体質が厳しく問われます。