主張
「普天間運用停止」
悪質な口約束を県民は許さぬ
菅義偉官房長官は先の沖縄訪問で、仲井真弘多(なかいまひろかず)知事が求める米軍普天間基地(宜野湾市)の「5年以内の運用停止」について、今年2月が起点になるとの考えを突然示しました(17日)。2019年2月までに運用停止にするという意味ですが、これまでの安倍晋三政権の言動からすれば本気で実現を考えた提案とは言えません。目前に迫った沖縄県知事選に向け、仲井真知事の「実績」にしようとしても、沖縄県民には通用するものではありません。
具体的道筋は示さず
「何の根拠もないリップサービスにすぎない」(沖縄タイムス)「県民を愚弄(ぐろう)する『普天間空手形』は要らない」(琉球新報)
菅長官が、仲井真知事の主張の通り、「普天間基地の5年以内運用停止」の起点を今年2月にするとの考えを示したことに、沖縄の19日付地元紙社説は痛烈な批判を浴びせました。
それもそのはずです。17日の沖縄訪問の8日前には、菅氏自身が「5年以内の運用停止」の起点をいつにするかは「いろんな考え方がある」(9日)と明言を避け、江渡聡徳(えとあきのり)防衛相も「決まっていない」(同)と述べていました。菅氏の沖縄訪問までの間に、政府内で、今年2月を起点にした「5年以内の運用停止」の実現可能性が真摯(しんし)に検討された形跡はまったくありません。
実際、菅氏は沖縄訪問で、「5年以内の運用停止」の具体的な道筋を何も示しませんでした。知事選対策の悪質な口約束であることは明らかです。
菅氏が具体策を口にできないのは、安倍政権が米政府との合意に縛られているからです。
日米両政府は昨年4月、沖縄の米軍基地に関する「統合計画」を発表しました。同計画は、普天間基地について「沖縄において代替施設が提供され次第、返還可能」だとし、名護市辺野古(へのこ)沿岸域への新基地建設を「返還条件」にしています。新基地の完成までには、調査・設計や工事などを合わせ、9年を見込んでいます。
在沖縄米軍トップのウィスラー4軍調整官は、新基地が辺野古に完成するまでは、普天間基地の運用を停止することは「できない」と明言しています(今年4月10日、ワシントン市内の講演)。
「5年以内の運用停止」を実現するには、日米が合意した新基地建設計画の工期をおよそ半分に大幅短縮させる必要がありますが、実現が極めて困難なのは誰の目からも明らかです。
安倍政権は7月、「5年以内の運用停止」に応えるとして、辺野古の新基地が完成するまで、普天間基地に配備されている垂直離着陸機オスプレイの部隊を佐賀空港に暫定移転する案を示しました。
新基地建設中止こそ
しかし、米側が難色を示したため、部隊の移転から訓練の移転にたちまちトーンダウンしました。そもそも沖縄県外への部隊移転が可能であれば、辺野古に新基地を建設する必要もありません。
安倍政権が普天間基地の「5年以内の運用停止」の条件として、辺野古への新基地建設をはじめ代替基地の確保に固執する限り、実現は不可能です。普天間基地の無条件即時撤去、辺野古への新基地建設中止こそ、沖縄県民多数の願いに応える唯一の道です。