辺野古だけの問題ではない―。沖縄県民の総意を無視して安倍政権が建設を強行しようとしている同県名護市辺野古への米軍新基地建設のための埋め立て土砂の多くは、沖縄県外から持ち込まれます。調達先となる地域でも自然破壊や住民への影響が懸念されます。
「辺野古埋め立て計画の中止を要望する」。瀬戸内海の乱開発を告発している市民団体「環瀬戸内海会議」は昨年12月、防衛省や沖縄県などに要望書を提出しました。
防衛省沖縄防衛局が昨年提出した埋め立て申請書には、土砂の大半を占める「岩ズリ」の調達先として、沖縄に加え九州・瀬戸内の7地区・13カ所の採石場が記載されています(地図)。このうち、瀬戸内では小豆島(香川県)や黒髪島(山口県)などが記載されています。
採石を行えば、それだけ山肌が削り取られます。同会議の松本宣崇事務局長は、今年が瀬戸内海国立公園指定80周年であることをあげ、「乱開発が繰り返された瀬戸内海の景観をさらなる採石で損なわないでほしい」と訴えました。
多くの土砂搬出が予想されるのは、沖縄に比較的近く、3カ所の採石場が記されている奄美大島です。このうち奄美市住用町では、かつて近隣の集落が採石による振動や粉じんなどの被害を受けていました。石材を積んだ大型トラックが走る道路は、通学路にもなっています。
日本共産党の三島照前市議は、「最近は大きな被害が発生していないが、辺野古への搬出が始まれば、騒音や粉じん被害が再び拡大しかねない」と指摘します。
前出の松本氏は、「本土から大量の土砂を辺野古に運ぶ計画は、ほとんど知られていない」と指摘。「採石場を抱える地域の住民が動きを監視し、本土と沖縄で情報の共有を進めるべきです」と訴えています。
東京ドーム17個分
埋め立て申請書によれば、辺野古の海を東京ドーム17個分にあたる2062万立方メートルの土砂で埋め立てます。構成比は「岩ズリ」79.7%、「山土」17.5%、「海砂」2.8%で、山土と海砂は沖縄本島と近海から、岩ズリは半分程度が県外から搬入されるとみられます。沿岸の埋め立て工事では通常、作業の効率性から、土砂を近隣から調達します。遠方から、これだけ大量に調達するのは異例です。
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